運送業界では深刻な人手不足が問題視されていますが、外国人ドライバーに注目が集まっていることはご存知ですか?
宅配の需要が増えつづけている日本にとって「ドライバーの人手不足」は、国が率先して解決しなければならない課題のひとつでしょう。
このような現状を踏まえて、外国人の雇用を促進できるよう特定技能制度の対象分野への追加も決定されました。

現在かなり注目されている「外国人ドライバー」ですが、なぜ外国人の人材に注目が集まっているのでしょうか? また実際に外国人を雇用する場合には、どんな点に注意して採用活動を行うべきでしょうか?

今回は外国人ドライバーの「今」と「未来」について詳しくご紹介いたします。

外国人ドライバーに期待が高まる理由は?

ドライバー職(運転手)は人手不足が大きな問題となっていますが、外国人を雇用することに注目が集まっています。

ドライバーの仕事は基礎体力も必要とされますので、高齢化が進む日本国内の人材では限界が感じられます。
全日本トラック教会が公開している「トラック運送業界の景況感」によると、トラック運送事業の人手不足感は強まっているようです。

しかしネットショッピング、ネットオークション(メルカリ、ヤフオク!など)での取引の増加にともなって、ドライバーや運送業務の需要は増えつづける一方です。
訪日外国人もコロナ以前の水準まで戻ってきており、旅行者を載せるためのタクシーでもより多くの人員が必要です。

特定技能の在留資格の中で、新たにドライバー職が追加され、二種免許試験でも20ヶ国語の言語で受けられる免許センターも増えています。
そのため、人手不足の企業は外国人をドライバー職としてより採用しやすくなり、外国人もドライバー職での就労がしやすくなりました。

▼こちらの記事もおすすめ

二種免許試験が20言語に対応|バス・タクシー業界で進む外国人ドライバーの採用増加とその背景、今後の動向について解説

今後は企業から外国人がドライバーで雇用されることは、とくに珍しいことではなくなるでしょう。
日本には永住者を中心として、外国人であっても日本語を話すことができ、運転免許を持っている方は多くいらっしゃるからです。

運送業界の人手不足はどのくらい深刻?

新型コロナウイルスの影響もありますが、2020年11月に厚生労働省が発表した国内全体の有効求人倍率は1.06倍でした。しかし運送などをおもとする「自動車を運転する職業」の有効求人倍率は2.99倍と発表されました。つまりひとりの求職者を、約3社が奪い合っている状態です。

運送業界は「働き手が減った」というわけではなく、「仕事量が増えた(増えつづけている)」といわれています。
年を追うごとにインターネットショッピングは増えていますし、新型コロナウイルスの拡大以降、ECサイトや通販の利用が増加しています。

出典:2021 年 家計消費状況調査 結果の概況

また「再配達問題」などの以前からあった問題も、さらに深刻化していることも、運送業界の人手不足につながっています。

入管法改正の影響

入管法とは「出入国管理及び難民認定法」の略称のことで、外国人の入国や在留などについて規定しています。
2019年にこの入管法が改正されました。

具体的には一定以上の技能実習経験があるか、定められた日本語能力やビジネススキルの試験に合格した場合には、外国人に「特定活動」という在留資格が与えられるようになりました。

「特定活動」とは日本で学んだ知識や日本語能力を生かして、特定の業務に従事する活動を認めるものです。
その中には「タクシー業」も含まれています。
つまりタクシー業界は、今までより外国人労働者を受け入れやすくなったといえます。

人手が不足しているタクシー業界では、外国人労働者はこれから増えていくでしょう。

※在留資格「特定活動(告示46号)」の詳しい内容については、こちらのリンクから内容を確認していただければと思います。

特定技能制度の対象分野に「自動車運送業分野(バス、タクシーおよびトラック運転手)」が追加

ドライバーの人手不足を解消するため、2024年3月、特定技能制度に「自動車運送業分野」が対象分野として追加されました。主に、バス、タクシー、トラックのドライバーが対象となります。

受け入れ見込みは2.45万人。いずれも、とくて技能技能の在留資格を取得するためには、技能水準、日本語能力をクリアする必要があります。

バスタクシートラック
・主な業務内容①運行業務

②接遇業務

①運行業務

②接遇業務

①運行業務

②荷役業務

・技術水準①第二種運転免許

②特定技能評価試験(バス)

①第二種運転免許

②特定技能評価試験(タクシー)

①第一種運転免許

②特定技能評価試験(トラック)

・日本語能力日本語能力試験N3日本語能力試験N3日本語能力試験N4

 

タクシードライバーでの実例

タクシードライバーとして外国人雇用を率先しておこなっている会社のひとつに「日の丸交通株式会社」があげられます。
同社は外国人労働者が入社後、運転技術・法令・地理などについて3ヶ月研修を行い、日本語学科試験・技術試験に合格すれば免許取得としております。

コロナが明けて訪日観光客の増加が見込まれる中、外国人と適切なコミュニケーションを取るためにも、外国人タクシードライバーの需要が増しています。

今後も外国人の旅行者や、国内に住んでいる外国人が増えれば増えるほど、さまざまな言葉でコミュニケーションすることができる外国人のタクシードライバーがさらにもとめられるでしょう。

▼実際に外国人採用をしているタクシー会社の記事はこちら!

タクシー会社で活躍中の外国人はどんなところがすごい? アサヒ交通株式会社さまに聞きました

▼外国人採用を推進している運輸業の記事はこちら!

運輸業での外国人採用を成功させるコツは? お客さまに外国人スタッフを受け入れてもらうには?

外国人ドライバー雇用の問題点は?

今後、外国人のドライバーは増えていくことが予想できます。しかし雇用をするうえでいくつか問題点があります。

もしこれらの問題点を意識せずに雇用をしてしまった場合、後々大きなトラブルに発展しかねません。事前に問題点を把握しておき、適切な準備をしたうえで採用活動を始めましょう。

また外国人を雇用する際は、ここであげている問題点のほかにも、「在留資格」や「在留期間」もあわせて確認しましょう。
確認せずに採用してしまうと、外国人労働者も企業も大きな損をすることがあります。事前確認を徹底することが大切です!

問題点①:サービスの質

日本における運送業界サービスの質は、他国と比較しても非常に高いことがよく知られています。

外国人を宅配ドライバーとして雇う際には、海外と日本の配送文化のちがいを教えることが大切です。
初めて日本で宅配ドライバーとして働く場合には、海外よりも日本では配送物を丁寧に扱う文化であることを伝えられるといいでしょう。

問題点②:免許取得ハードルの高さ

日本で大型免許や二種免許を取得する場合には、「普通自動車運転免許のいずれかを取得していて、かつ運転経歴が3年以上あること」が条件とされています。
仮に外国人が「留学ビザ」で日本に訪れていた場合は、期間は最長で4年3ヶ月で、入国後に免許をもし取得できても在留期間中に働けるのは1年弱。

しかし、前述しましたが二種免許が外国語対応することや、特定技能としてドライバー職が追加される見込みであることから、この点については国レベルでの緩和が行われています。

外国人ドライバー採用で気をつけることは?

「身分系」がおすすめ

在留資格の中には、身分系(みぶんけい)と呼ばれる、「身分・地位に基づく在留資格」を持っている方がいます。

これには「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」が当てはまり、この方々には就労制限はありません。雇う際も日本人とほとんど同じように雇うことができます。

永住者になるには「日本で10年居住していること」が条件となりますので、免許を持っている方も多いです。

▼こちらの記事もおすすめ

「身分系」の在留資格 全4種類|就労系との違い、採用するメリットについて詳しく解説

雇う側も意識を変える

永住権を持っていたとしても、日々のコミュニケーションは自分たちのコミュニティで、母語で行っているでしょう。
わたしたちが外国に10年住んでも、かならずしも言語的にネイティブと同じレベルになれるかはわかりません。
外国人からすると日本語は非常に習得が難しいとされており、漢字の読み書きなどもかなり習得が難しいと言われています。

雇う会社側も、異国で働く外国人の気持ちになることが大切です。
マニュアルを多言語で作成したり、定期的なマナー研修、現場におけるOJT研修を行うことが必要となるでしょう!

まとめ

ドライバー不足が深刻な運輸業、タクシー業。日本の労働人口の縮小なども起因して人材確保がますます難しくなっていますが、その解決策となるのが外国人人材です。特定技能への「運輸業」ドライバー職追加決定などより外国人人材がドライバー職で活躍の場を広げるのではないでしょうか。 ぜひ、外国人採用を始めて、人手不足を解消しましょう。