日本語能力試験(JLPT)について解説! 日本語検定の受験要件、難易度(N3・N4 etc)、受けるメリットや目的は?
外国人採用をおこなう際に、候補者の「日本語レベル」がどの程度かを知りたい方は多いです。調べる方法としては、「日本語能力試験(JLPT)」の認定結果を確認する方法があります。
日本語能力試験では5段階レベルがあり、どのくらいのレベルの試験に合格しているかを知ることが、採用をする際の判断材料になるでしょう。レベルはN1〜N5にわかれていますが、どの程度日本語を使うことができるかの指標になります。
目次
日本語能力試験(JLPT)について
日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母語とししない人たちの日本語能力を評価するための試験です。1984年に始まり、日本以外の国でも世界各地で行われている試験です。
2023年には約148万人の受験がありました。
この試験では「日本語の文字、ボキャブラリー、文法がどのくらいわかっているか」(言語的な知識)、「実際にコミュニケーションで言語知識をどのくらい使えるか」(読む力、聞く力)の大きくは2つの側面でチェックされます。
JLPTはN1(上級)〜N5(初級)の5段階にわかれており、受験者は自分の受けたい試験を受けることができます。
日本語能力試験と日本語検定のちがい
「日本語能力試験(JLPT)」と似た名称で「日本語検定」というものがあります。
この検定はサイトをみていただくとわかるかもしれませんが、日本語を使うすべてのひとが対象です。こちらの試験では、「漢字」「表記」「敬語」「言葉の意味」「語彙」「文法」のそれぞれの領域での習熟度を測ります。
1級がもっともレベルが高く、社会人でも上級とされるレベルです。7級は小学生2年生のレベルといわれています。
日本語能力の証明書が必要な在留資格
外国人の持っている在留資格には、取得要件に「一定レベル以上の日本語能力」が含まれるものがあります。
たとえば在留資格の「特定技能1号」を取得するためには、JLPTのN4レベル以上であることが求められます(ちなみに「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)では、A2レベル以上です)。またそのほかにも、在留資格「高度専門職」は高度人材ポイント制が使われていますが、日本語能力が高いとボーナスポイントが加算されます。
このように在留資格によっては語学力を証明することで、審査結果にいい影響を与えることがあります。
日本語能力試験の受験者数の推移
日本語能力試験は、7月と12月の年に2回試験が実施されています。近年は日本の外国人労働者の受け入れ政策が多く行われていますが、これと呼応するようにして日本語能力試験も受ける方が増えています。
応募者数 | 受験者数 | |
2022年12月 | 50万人 | 43万人 |
2023年7月 | 69万人 | 60万人 |
2023年12月 | 78万人 | 66万人 |
日本語能力試験(JLPT)の受験要件
日本語能力試験はレベルでN1~N5にわかれています。年齢制限はとくになく、国籍にも制限はありません。世界のどんな場所に住んでいるひとでも、どのような年齢でも受けることができます。試験を受けることができる国は、以降に記載いたします。
受験登録の方法はオンラインでの申し込みが主流です。JLPTの公式ウェブサイトから必要情報を入力して、受験料を支払う必要があります。受験料は日本国内では7,500円です(※2024年7月時点)。最新の価格は公式サイトで確認してください。
試験のレベル
N1、N2、N3、N4、N5の5つのレベルがあります。
最も難しいレベルがN1、最もやさしいレベルがN5です。
実施場所・回数
7月と12月の年2回、以下の場所で実施されます。
※海外では年1回実施のみの場合もあります
【東アジア】
日本(国内47都道府県)、韓国、中国、モンゴル、台湾
【東南アジア】
インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス
【南アジア】
インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブ
【大洋州】
オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー(休止中)、マーシャル諸島(休止中)
【北米】
カナダ、アメリカ
【中南米】
コスタリカ、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、エルサルバドル、コロンビア、チリ、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、ボリビア
【西欧】
アイルランド、イタリア、イギリス、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポルトガル
【東欧】
アゼルバイジャン、アルメニア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、ジョージア、スロベニア、セルビア、タジキスタン、チェコ、トルクメニスタン、ハンガリー、ブルガリア、ベラルーシ、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、ルーマニア、ロシア
【中東】
イスラエル、イラン、カタール、サウジアラビア、トルコ、ヨルダン
【北アフリカ】
アルジェリア、エジプト、スーダン(休止中)、チュニジア、モロッコ
【アフリカ】
ガーナ、ケニア、コートジボワール、コンゴ民主共和国、ベナン、マダガスカル、南アフリカ
国、地域ごとの実施年および試験会場については、以下から問い合わせて確認することができます。
▷独立行政法人国際交流基金日本語試験センター
jlptinfo@jpf.go.jp
出典:国際交流基金 – 日本語の試験を受ける
▷公益財団法人日本台湾交流協会 東京本部
03-5573-2600
出典:公益財団法人日本台湾交流協会
日本語能力試験の合格率
2023年(令和5年)12月のデータは以下のものです。N5の試験では46.7%が合格。
N1だと30.9%の合格率になります。
N1 | N2 | N3 | N4 | N5 | |
国内の合格率(%) | 27.8 | 33.7 | 32.0 | 33.0 | 55.9 |
海外の合格率(%) | 32.7 | 42.2 | 37.6 | 31.0 | 46.0 |
合計での合格率(%) | 30.9 | 38.7 | 35.1 | 31.6 | 46.7 |
出典:2023年 第2回(12月)データ|過去の試験のデータ
試験方法
各地域の試験会場でおこなわれます。
会話形式や記述式の回答はなく、「言語知識」「読解」「聴解」の3つをマークシート方式で回答します。
日本語能力試験の難易度
日本語能力試験では、N1〜N5の5段階でレベルが用意されています。試験の内容がもっとも難しいのはN1です。N1レベルで必要になる漢字の目安としては、2,000文字程度です。
これは中学3年生の義務教育修了レベルと同じため、非常に高いレベルであることがわかるでしょう。
◆レベル別の認定の目安
N1:幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
N2:日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N4:基本的な日本語を理解することができる
N5:基本的な日本語をある程度理解することができる
では、詳しくみていきましょう。
N1レベルの問題例①
N1レベルの問題例②
📕N1レベルの読解力:
論理的に書かれた文章や、あいまいな文章も理解することができます。
👂N1レベルの聞く力:
自然なスピードの日本語のニュースや、講義などを理解できます。
N2レベルの問題例①
N2レベルの問題例②
📕N2レベルの読解力:
新聞の記事や解説、雑誌やマンガなどをほとんど理解できます。
👂N2レベルの聞く力:
自然なスピードの日本語のニュースや会話を聞いて、話のながれをつかんだり、おおむね何を言っていたか要約することができます。
N3レベルの問題例①
N3レベルの問題例②
📕N3レベルの読解力:
日常的な話題について書かれた文章を理解できます。専門用語が多かったり、難しい漢字が多かったりしなければ、だいたいわかります。
👂N3レベルの聞く力:
普通よりもすこしゆっくりめの会話であれば、話の流れをおおむね理解することができます。話し手がカンタンなことばに言い換えるなどすると、より理解することができます。
N4レベルの問題例①
N4レベルの問題例②
📕N4レベルの読解力:
身近な話題について、基本的なことばや漢字を使って書かれている文章を読んで理解できます。
👂N4レベルの聞く力:
日常的な場面で、ややゆったりめの速度で話される会話であれば、ほとんど理解することができます。
N5レベルの問題例①
N5レベルの問題例②
日本語能力試験を受ける目的やメリットは?
日本語能力試験を受けることの目的には、以下のことが挙げられます。
◉メリット
・就職、キャリアの向上
・移住、ビザの取得
・自己成長と達成感
就職、キャリアの向上
JLPTの資格は、日本企業での採用や昇進の際に評価されます。とくにN1やN2の資格を持っていることは、高い日本語能力を持っていることの証明になります。
また国際的なキャリアを築く面でも、この資格は有効に働きます。日本に関連する業務を行う多国籍企業で働こうと思うときにはとくに。ビジネスシーンでの日本語能力を証明することで、グローバルなキャリアの選択肢が広がるでしょう。
また日本で資格を取る場合にも、このJLPTの資格が必要となることがあります。
移住、ビザの取得
JLPTでのN4を取得していることが、「特定技能」の在留資格を取得するための要件のひとつです。日本での長期滞在や、就労が可能になるため、この資格の取得を目指す方はいまとても増えています。
またこのほかの在留資格でも、JLPTで高いレベルを取っていることで有利になることがあります。永住権の申請でも同じことが言えますね。
自己成長と達成感
新しい言語を習得し、自己成長を客観的な評価で図るのにもJLPTは役立ちます。多くの方が受ける試験なので、いい結果が出れば自己成長を実感できます。
日本語能力試験で気を付けることは?
日本語能力試験はあくまでも試験であり、実際の会話力がともなっているかどうかは別の問題です。人間性やコミュニケーション能力の面でも、N1やN2を取得していなくても、非常に高いレベルの方、職場にいい影響をもたらす方が多くいることは想像に固くないでしょう。
さいごに
今回紹介したように、日本語能力試験は日本でもっとも有名な日本語の試験です。外国人採用においては、仕事への応募者がN1からN5のどのレベルを取得しているのかは、非常に重要な情報でしょう。
ただあくまで対策ができる試験にすぎないとも言えます。仕事に応募してくる外国人の履歴書をしっかりと見ることが大切です。たとえば日本語試験が苦手でも、エンジニアとしての能力が高い、コミュニケーション能力が高くて現場でいつも好かれる、などの方もいます。
これらのことは、ぜひ知っておいてほしい点です。