警備員はオフィスビルや商業施設、工事現場などで公共の秩序を守る重要な役割を担っています。

警備業法により警備員の配置が義務付けられている場所もあるため、警備員の需要は常に高いです。
しかしながら過酷な労働条件や低賃金が原因で離職率が高く、警備業界は慢性的な人手不足に悩まされています。

このような状況下で、多くの警備業者が外国人採用に目を向け始めています。
本記事では、警備業界における外国人採用の現状やメリットについて詳しく解説します。

外国人でも警備員として採用できる

まず前提として、外国人でも警備員になることは可能です。
ただし、以下2つの条件を満たしていることが条件となります。

  1. 警備員の「欠格事由」に該当していない
  2. 警備員として従事が可能な在留資格を持っている

ここからは、これらの条件について解説します。

警備員の欠格事由は、日本人と同じ基準

警備員には欠格事由があります。
欠格事由とは、資格を取得するのにふさわしくない行動や状況のことです。
欠格事由に挙げられている状況に陥っていたり、不適切な行動をした人は警備員として働く資格が得られません。

欠格事由は日本人と外国人で区別されることはなく、全員が以下の基準で設けられています。

  1. 未成年(18歳以下)である
  2. 自己破産をしている、もしくは破産後に復権していない
  3. 犯罪歴がある、もしくは刑の終了から5年経過していない
  4. 直近5年間で警備業法に違反したことがある
  5. 暴力を振るう恐れがある
  6. 反社会勢力との関わりがある
  7. アルコールや薬物の中毒者である
  8. 精神障害を抱えており、業務上適切な判断ができない

参考:警察庁 警備業法

警備員が対象となる「就労系」の在留資格はない

日本の在留資格制度には、警備員として働くことを直接目的とした「就労系」の在留資格はありません。
つまり今現在、警備員として働いている外国人は「就労系以外の在留資格」を持っており、その範囲内で警備業務に従事しているということです。

具体的には「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」「留学」「家族滞在」「文化活動」の在留資格のいずれかを持っている外国人が警備員として働くことできます。※在留資格によっては就労制限付きの場合があります

そのため、警備業界の人手不足を解消するために「外国人がより容易に警備員として働けるような制度改革」が求められています。

在留外国人の約6割は、警備員として従事する資格がある

出典:出入国在留管理庁 令和5年末現在における在留外国人数について

2023年末時点の在留外国人数は、3,410,992人となり過去最高を記録しました。
在留資格の内訳は、以下の通りです。

  • 永住者(特別永住者を含む) 1,172,787人
  • 日本人の配偶者等 148,477人
  • 永住者の配偶者等 50,995人
  • 定住者 216,868人
  • 留学 340,883人
  • 家族滞在 266,020人
  • 文化活動 2,581人
  • その他 1,212,381人

上記内訳を見ると、合計2,198,611人は警備員として働くことが可能な在留資格を持っています。
つまり、日本で生活している外国人の約65%は警備業界における外国人採用の対象者ということです。

警備員として雇用可能な在留資格

前述したとおり、以下の在留資格を持っている外国人は警備員として雇用することができます。

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、留学、家族滞在、文化活動

ここからは、各在留資格の概要と就労制限について紹介します。

身分系の在留資格

結論からいうと、身分系の外国人は「日本人と同じように」働けます。

「身分系」の在留資格 全4種類|就労系との違い、採用するメリットについて詳しく解説

在留資格「永住者」

永住者は日本での半永久的な滞在を可能にする在留資格です。

取得した外国人は「国籍を変えることなく」「在留期間の制約を受けず」「日本国内に半永久的に滞在」できます。
本人が問題を起こさない限りはほぼ無期限にわたり日本に住み続けることが可能です。

永住者には就労制限がないため、日本人と同じように雇用が可能です。つまり、正社員やアルバイトといった雇用形態を気にせずに採用できます。

在留資格「日本人の配偶者等」

日本人の配偶者等はその名のとおり、日本人と国際結婚した外国人が日本に居住することを認める在留資格です。
日本人の配偶者等は就労制限がないため、日本人と同じように雇用が可能です。

在留資格「永住者の配偶者等」

永住者の配偶者等は在留資格「永住者」を持つ外国人と婚姻関係にある外国人が日本に居住することを認める在留資格です。
また、永住者の実子も日本に在留する場合はこちらの在留資格が該当します。
永住者の配偶者等は就労制限がないため、日本人と同じように雇用が可能です。

在留資格「定住者」

定住者は法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認める在留資格です。

定住者には「告示定住者」と「告示外定住者」があります。告示定住者は特定の国からの難民や日系外国人などが取得し、告示外定住者は配偶者と離婚・死別した方などが状況に応じて取得します。
定住者には就労制限がないため、日本人と同じように雇用が可能です。

就労系、身分系以外の在留資格

結論からいうと、就労系、身分系以外の外国人は「時間制限ありのアルバイト」として働けます。

アルバイトで採用できる在留資格は? 資格外活動許可が必要な資格はある?

在留資格「留学」

留学は外国人が日本の学校で教育を受けるための在留資格です。基本的には、就労による収入を得ることは認められていません。

ただし出入国在留管理局で「資格外活動許可証」を取得している場合は、条件付きでアルバイト雇用が可能になります。
たとえば「1週間の労働時間が28時間以下であること」という労働時間の制限がありますが、これを守れば警備員として働くことができます。

在留資格「家族滞在」

家族滞在は、日本に中長期在留している外国人の扶養家族のための在留資格です。基本的には、就労による収入を得ることは認められていません。

ただし出入国在留管理局で「資格外活動許可証」を取得している場合は、条件付きでアルバイト雇用が可能になります。
留学と同様に「1週間の労働時間が28時間以下であること」という労働時間の制限などを守れば警備員として働くことができます。

在留資格「文化活動」

文化活動は外国人が日本特有の文化・技芸について、専門家の指導を受けながら研究することを認める在留資格です。基本的には、就労による収入を得ることは認められていません。

ただし出入国在留管理局で「資格外活動許可証」を取得している場合は、条件付きでアルバイト雇用が可能になります。
留学や家族滞在と同様に「1週間の労働時間が28時間以下であること」という労働時間の制限などを守れば警備員として働くことができます。

資格外活動を許可されているかどうかは「資格外活動許可書」もしくは在留カード裏面の最下部にある「資格外活動許可欄(に許可と記載されている)」で確認できます。

外国人の警備員を雇用するメリット

メリット① 若い労働力が確保できる

最近では警備業界でもDXが進み、警備員がAIカメラや配置管理システムを活用する機会が増えています。
このような状況下で、新しい技術やその応用方法に対する理解がはやい若者を採用したいと考える企業は少なくありません。

少子高齢化により若い日本人労働者数は減少し、とくに離職者の多い警備業界では求人への応募者が高齢化しています。
しかし日本人の現状とは異なり、外国人労働者の数は「20〜29歳」の割合が最も多いです。
そのため若い外国人労働者を採用することで長期的に働ける警備員の確保が期待できます。

メリット② 労働意欲が高く、チームのモチベーションが向上する

留学や文化活動の在留資格で来日した外国人は「生活にかかるお金はアルバイトで稼ぐ」ことが多いです。

本来の活動を続けるためにも、資格外活動が必要なことだと考えていて働く熱意や意欲が高い人が多くいます。その意欲は業務に対する積極性や責任感としてあらわれます。
たとえば、外国人警備員が緊張感を持って仕事に取り組む姿や、彼らの強い責任感・使命感を間近で感じることで、教える側の日本人も自身の業務に対する意識を高めることができます。

メリット③ トラブル発生時に多言語対応が可能になる

外国人労働者を雇用することで、多言語対応の向上が大幅に期待できます。
とくに商業施設やイベント会場では、インバウンド需要が拡大するなか、文化の違いによりトラブルが起こることが少なくありません。

たとえば海外からの観光客が道に迷ったり、緊急事態が発生した場合、多言語で対応できる警備員の存在が事態の収集を早めることに繋がります。

メリット④ 政府の支援プログラムが利用できる

外国人労働者の雇用には、政府の助成金や補助金を活用することができます。これにより、雇用コストの削減や研修プログラムの充実が図られ、企業の経済的なメリットが生まれます。
また、政府との協力により、外国人労働者の雇用に関する法的な問題や手続きをスムーズに進めることもメリットとして挙げられます。

外国人雇用で使える助成金・補助金一覧|自社に合う助成金・補助金を見つけて賢く外国人を採用しよう

外国人警備員の採用事例を紹介

ここからは、在留外国人向け求人媒体である「Guidable Jobs(ガイダブル・ジョブス)」を利用して、外国人採用に成功した事例を紹介いたします。

【事例1】SNSを使った採用活動で、大人数採用に成功!

  • 掲載日数:180日
  • 採用者数:10名
  • 企業のサポート内容:未経験歓迎、留学生歓迎、女性歓迎、能力次第で昇給あり、入社祝い金あり

アルバイト希望者(資格外活動含)をメインに、日本語要件を低く設定して求人掲載しました。また、より多くの方にアプローチするためにSNS広告を活用して募集をおこないました。
その結果、合計425名のなかからターゲットに近い人材(シフトの融通が聞く留学生・家族滞在)と身分系外国人の10名を採用することに成功しました。

こちらの求人では、スムーズに採用活動を進めるためにGuidableが一次面接を代行しました。

【事例2】掲載開始から2週間で採用成功!

  • 掲載日数:2週間(契約は30日プラン)
  • 採用者数:1名
  • 企業のサポート内容:未経験者歓迎、入社応援金あり、日給保証あり、能力・勤務姿勢により手当あり、研修あり

7か国の外国人スタッフが活躍中のこちらの企業では「外国人採用を積極的におこなっている企業」といった働きやすさ・安心感を企業の特徴として強調することで、わずか2週間で必要な人材の採用に成功しました。

【事例3】身分系在留資格を持つ、若年層の外国人の採用に成功!

  • 掲載日数:180日
  • 採用者数:5名
  • 企業のサポート内容:未経験者歓迎、制服貸与、新任研修・現場研修あり、ビザサポートあり

外国人観光客の多い大規模複合施設での警備業務のため、日本語と英語が話せることを条件に求人を掲載しました。
合計224名の応募者のなかには母国語・日本語・英語の3か国語を話せる外国人も多く、最終的に5名の採用が決まりました。

また、未経験歓迎かつ研修などのサポートが充実していること、国際色豊かな企業であることをアピールすることで「若年層(20代)」かつ「身分系」という長期就労を見込める外国人採用に成功しました。

さいごに

企業が外国人労働者を受け入れるメリットは大きく、彼らは警備業界の未来を支える大きな力になります。
雇用後に長期的に働いてもらうためにも、文化の違いやコミュニケーション方法を理解してより良い関係を築いていきましょう。