外国人留学生を新卒採用するには? 留学生の就職状況、選考時の確認事項や必要書類、在留資格変更の方法について解説
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日本政府は人手不足に対応するため、外国人材の受け入れを積極的に進めています。
外国人採用を検討する企業にとっては、海外在住の外国人を採用するよりも、すでに日本語能力があり日本文化に馴染んでいる留学生を新卒採用することが有利です。
本記事では、外国人留学生の就職状況、面接時の確認事項や必要書類、在留資格変更の方法について解説します。
留学生の採用を成功させるためのポイントを理解し、スムーズな採用プロセスを進めるためのガイドとしてご活用ください。
目次
外国人留学生の就職状況
日本で就職したい外国人留学生は、全体の約6割
日本学生支援機構の調査によると、令和3年の卒業(修了)留学生の数は53,840人、そのうち日本での就労を希望した人数は約3万1千人おり、全体の58%を締めていました。
しかしながら、実際に就職先が決まったのは25,054人となっています。
つまり就職希望者の2割は就職先が見つからず、帰国せざるをえなかったということです。
日本での就労を希望する外国人留学生の特徴
人気の仕事は、語学力を活かせる「翻訳・通訳」
出典:出入国在留管理庁 令和4年における留学生の日本企業等への就職状況について
留学生が日本で就職するには、在留資格を就労系のものに変更する必要があります。変更後の在留資格は「技術・人文知識・国際業務」が最も多く、その割合は86.3%にも及びます。
業務内容は業界を問わず「翻訳・通訳業務」が最も多く、その後ろに「情報処理・通信技術業務」「マーケティング、リサーチ業務」がつづきます。
これは、日本留学中に取得した語学力や専門知識・技術が役立っていることを示しています。
留学生の持つ多言語能力や技術力、国際的な視点は、日本人と同等もしくはそれ以上の即戦力として活かせる可能性があるのです。
外国人留学生が就職活動で苦労していること
経済産業省の調査によると、外国人留学生が就職活動中に最も困ったこととして「留学生向けの求人が少ない」という意見が最も多く挙げられました。また「日本の就職活動の仕組みやスケジュールが複雑」であることや「業界研究や企業研究の方法が難しい」という意見も目立ちました。
以上のことから、外国人採用を検討している企業はまず第一に留学生向けの求人情報を増やし、わかりやすい形で提供することが重要です。
また、企業が設けている採用活動の仕組みやスケジュールについて説明する機会を増やすことが求められます。くわえて、業界全体や企業の特徴についての情報をこまめに提供し、留学生がスムーズに就職活動を進められるようにサポートすることが、企業側の採用活動を成功させる鍵となります。
参考:日本学生支援機構(JASSO) 外国人留学生のための就活ガイド2025
外国人留学生に向けた採用活動のながれ
STEP1. 求人情報の掲載
新卒採用では日本人・外国人どちらが対象であっても、求人を広く公開して多くの応募者を獲得する必要があります。近年は求人媒体やコーポレートサイトに求人情報を掲載することが一般的です。
上記に加えて、留学生が対象の場合は学校の就職課・キャリアセンターを活用することをおすすめします。
就職課・キャリアセンターは学校側のフォローアップがあるため、留学生の利用率が高いのが特徴です。求人費用がかからないことも多いため積極的に利用しましょう。
求人掲載の注意点
- 多言語能力や異文化理解力などの、留学生特有の強みが活かせることを明記する
- 留学生が理解しやすい形で、採用プロセス(書類選考、面接方法、内定通知など)を明記する
- サポート体制や研修プログラムなど、入社後の支援内容を明記する
- 「やさしい日本語」や「英語」で書かれた求人票を作成すると親切
STEP2. 説明会の開催
日本人の就職活動や中途の外国人採用とはちがい、留学生は日本での就職活動に慣れていないということを理解しておきましょう。
留学生に対しては「自社の魅力を伝える」だけでなく、就活の進め方やスケジュール感が掴めているかを確認することが大切です。
説明会をおこなう際の注意点
- 留学生が安心して質問できる雰囲気をつくり、一人ひとりの不安や疑問に丁寧に答える
- 留学生が就職活動を計画的に進めるために、日本全体の就職活動の進め方や一般的なスケジュール感について説明する
説明会をおこなう際の必要書類
- 会社案内やプレゼンテーション資料を多言語対応にしておくと親切
STEP3. 書類選考
書類選考を通じて、留学生の基本情報や学歴、資格などと業務内容の関連性を確認します。
履歴書・エントリーシートには学業以外の個人の功績や、資格外活動についても記載してもらいましょう。
書類選考の注意点
- 留学生の履修内容で適切な在留資格が取得できるか、法的に確認する
書類選考の必要書類
- 履歴書・エントリーシート
- 履修科目の証明書(成績証明書や出席状況証明書など)
- 日本語能力の証明書(日本語力が必要な在留資格に変更する場合や、業務に日本語が必要な場合)
STEP4. 面接
面接で意気込みを聞くことは大切ですが、雇用条件に対する認識のすり合わせや、書類選考で提出された内容に間違いがないかを一つずつ確認することも重要です。
言語の壁や文化の違いがある以上、こちらがしっかり伝えたと思っていても留学生は理解し切れていないこともあります。また、外国人側が自信をもっていても「企業側の意図と違った捉え方」になっていることもあります。
内定後の辞退を防ぐためにも、お互いが理解できるまで確認作業を行いましょう。
面接時の注意点
- 仕事の内容や雇用条件を相互確認する
- 国籍や宗教で差別をしない
面接時の必要書類
- 書類選考時の情報を再確認する
STEP5. 内定
面接で話した内容と日本語レベルが業務に支障がないと判断できたら、採用通知書(内定通知書)を送付します。
一般的な新卒採用では4月1日に雇用契約を締結することが多いですが、留学生を採用する場合は労働条件をあらかじめ伝えて、それに対する合意を得たことを書面で残す方が良いといえます。
具体的には労働条件通知書と内定承諾書を発行し、雇用主と留学生の双方が労働条件に合意しておくことで、入社当日の(認識違いや勘違いなどによる)トラブルを避けやすくなります。
また、在留資格の変更にかかる期間を踏まえて、遅くとも11月末までには内定の承諾を得るようにしましょう。
内定時の注意点
- 労働条件に合意を得ておく
- 11月末までに内定承諾書を受け取る
内定時の必要書類
- 採用通知書(内定通知書)
- 労働条件通知書
- 内定承諾書
- 返信用封筒
STEP6. 在留資格の変更
在留資格の変更申請は、就労開始前年の12月〜翌年1月に開始します。
通常は申請後1〜2ヶ月程度で変更許可がおりますが、混雑具合によっては予定より時間がかかる場合があります。ですので、入社日が決まっている場合はなるべく早く申請しましょう。
申請時は卒業前であることが多いため、卒業見込証明書を用いて申請します。
そして変更許可通知を受け取ったら、実際に卒業してから卒業証明書を提出して新しい在留カードを受け取ります。
在留資格変更時の注意点
- 12月以降なるべく早く申請する
- 変更許可通知が来ても、新しい在留カードを受け取るまで(卒業するまで)は「留学」として活動する
在留資格変更時の必要書類
- 卒業見込証明書
- 卒業証明書
- 各種在留資格の変更に必要な書類(在留資格ごとに異なる)
STEP7. 入社
入社当日に、雇用契約書へ記入・捺印してもらいます。内定通知の際に同封した労働条件通知書と同内容で作成します。
入社直後は外国人労働者といっしょに各部署へ挨拶へ行き、オリエンテーションとして企業理念や文化、キャリアに対する説明をおこなうと親切です。
そして、人事担当者はハローワークへ外国人雇用状況の届出を、出入国在留管理庁へ所属機関等に関する届出を提出します。
採用した外国人労働者から在留カード・パスポートを借り、かならず照らし合わせながら記入してください。
在留カード・パスポートのコピーの提出は不要ですが、届出の記載内容にまちがいがあると企業が罰則を科される恐れがありますので十分に注意しましょう。
在留資格変更時の注意点
- 外国人雇用状況の届出は入社日〜翌月10日まで
- 所属機関等に関する届出は入社日〜14日以内
在留資格変更時の必要書類
- 雇用契約書
- 雇用保険被保険者資格取得届(もしくは外国人雇用状況の届出書)
- 所属(活動)機関等に関する届出書
STEP8. 入社後
採用後は、継続的なサポートをおこないましょう。
たとえば、入社後の在留資格の更新や、永住者や高度専門職などへの在留資格変更を希望する場合には、書類作成や提出をサポートします。
また、定期的な面談を実施したり、日本人社員とのコミュニケーションの機会を設けることで、留学生が安心して働き続けるための環境を整えましょう。
さいごに
日本政府は、外国人留学生の就職支援を充実させるために制度の改正をすすめています。
これにより、留学生が日本でキャリアを築きやすい環境が整い、日本の労働者不足解消にもつながると期待されています。
今後、企業の競争力を高めるためにも、積極的に外国人留学生の新卒採用を検討してみてはいかがでしょうか。