人手不足や市場のグローバル化により、外国人の採用を考える方も増えているでしょう。外国人を受け入れる際に確認すべきことは多く、特に「出入国」「在留資格」はつねに最新の情報をおさえる必要があります。

本記事では、外国人を採用するうえで従う「入管法」に関する最新の状況をご紹介します。

1.入管法とは?

外国人にかかわることでよく見聞きする入管法とは、どんな法律なのでしょうか?

入管法の正式名称は「出入国管理及び難民認定法」です。日本からの出国・入国におけるルール難民の認定手続きを整備する目的の法律となっています。

出入国管理及び難民認定法(入管法)は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とした法律です。

参考:出入国管理及び難民認定法 内閣府男女共同参画局

外国人だけに限らず、日本人を含めたすべての人が対象となっています。外国人を雇用する条件として、ある程度の知識をもっておく必要があるといえるでしょう。

2.外国人採用に関わる変更点

そんな入管法ですが、近年ではおおきな改正がおこなわれています。以下では具体的な改正の内容と、それにともなう外国人採用における変更点について解説します。

・特定技能の創設

外国人採用にもっとも関わる改正として、2019年におこなわれた新たな在留資格「特定技能」の創設があります。特定技能とは、おもに人手不足の解消を目的に創設されたものであり、あらゆる職種・業務で外国人を雇用することが可能となりました。

取得のためには、各分野でもうけられている試験や、日本語検定試験への合格が必要となります。そのため、ある程度の知識や語学力をもった即戦力の人材が対象となります。また、既存の在留資格である「技能実習」から「特定技能」への移行が可能となったことも日本で外国人労働者が急増している要因となっているようです。

特定技能「1号と2号のちがい」「在留期間」「職種・分野」などのくわしい情報は以下で解説していますので、ぜひご覧ください。

在留資格「特定技能」についてぜんぶわかる|制度の概要・受け入れや支援の方法・関連機関の役割をまるっと解説

・特定技能分野の拡大

特定技能の創設につづいて、直近では受け入れる分野の拡大がおこなわれています。2023年の改正では、「特定技能2号」に外食業・宿泊をふくむ9分野が追加され、1号の12分野のうち「介護」以外すべての分野で受け入れが可能となりました。

また、2024年3月には政府によって特定技能の対象に「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」を新たに追加することが閣議決定されました。4月以降に改正がおこなわれるとされており、現在必要な準備がすすめられているようです。

参考:特定技能2号の対象分野の追加について 出入国管理庁

・外国人雇用に及ぼす影響

このように、入管法における改正では、外国人材の受け入れを拡大する動きがみられました。一方で、受け入れをより専門的な能力をもつ外国人に絞っているともいえます。

外国人を雇用する上での条件は定期的にかわっていくため、こまめなチェックが必要です。本記事では最新の情報をつねに更新していくので、入管法の改正がおこなわれた際には、ぜひくりかえしご確認ください。

3.最新の改正

・難民認定の見直し

入管法の、最新の改正は2023年6月におこなわれました。この改正は、日本からの退去ができない・収容が長期化している外国人が多くいる問題の解消が目的といわれています。内容は以下のとおりです。

・難民認定の申請が3回目以降の場合、「相当な理由」を示さないと本国への強制送還が可能

・紛争などから逃れてきたという人を、「補完的保護対象者」として入国許可する

・送還を妨害した人に対する刑事罰を新設する

・入管施設への収容を3ヵ月ごとに見直す

・収容施設ではなく、支援者や親族など入管が認めた「監理人」のもとで生活できる措置制度の新設

参考:入管法等改正法の概要等 出入国管理庁

このように、外国人の収容・送還のルールがおもに変更されました。

・多数の批判

しかし、この新たな改正には国内外から批判があつまっています。その主な理由として、日本の難民受け入れに対する消極的な姿勢があげられます。

日本は他国にくらべて難民認定がきびしいとされており、長年のあいだ問題視されてきました。実際に、2021年に日本で認定された難民はわずか74人と少ない数字になっています。

参考:難民認定者数と認定率の世界比較、受け入れ数ランキングや日本の現状 WorldVision

その上で、今回の改正では「難民認定の申請が3回目以降の場合、「相当な理由」を示さないと本国への強制送還が可能」とすることで強制送還を容易にし、保護が必要な人たちを危険にさらす可能性をより高めたという声があがっています。

・難民認定が厳しい理由

日本が難民認定にきびしい理由としては、おもに出稼ぎ目的の在留を防ぐためだといわれています。

2010年に日本では、すべての難民認定申請者に対して就労を許可していました。しかし、結果として保護を必要とする方よりも、出稼ぎ目的で申請する方がふえたという背景があります。

こうした過去から、2018年に一律の就労許可が廃止され、現在の難民認定率の低さにつながっています。

4.過去の主要な改正

入管法は、その時々の社会情勢にあわせて改正されてきました。以下は、過去におこなわれた主要な改正となります。

1982年:戦前から日本に住む韓国人・朝鮮人・台湾人の特例永住権を認定

1980年代後半~1990年:在留資格の明確化・不法就労者の雇用主に対する厳罰化を規定

2009年:在留カードの交付

2019年:在留資格「特定技能」の創設

ここからもわかるように、近年では人手不足が目立ち、外国人が働きやすい環境がととのえられています。人材確保に悩まされている方は、ぜひ一度外国人採用を考えてみてはいかがでしょうか?

5.まとめ

本記事では、入管法改正に関する最新の情報と外国人雇用にあたえる影響についてご紹介しました。

「特定技能」創設のように、入管法は外国人雇用に関することで定期的な変更をあたえるため、注意が必要です。とくに外国人を雇用している方、これから雇用を考えている方は今後の動向に注目していきましょう!