建設業界の外国人採用|受け入れ準備から採用方法、在留資格の不安を解消するノウハウをわかりやすく紹介!
少子高齢化や転職する人が増えていることから、建設業界では働く人が足りなくなってきています。こうしたなかで、外国人を採用しようと考える会社が増えています。
この記事では、建設業で外国人を雇うことの良い点や、外国人が建設業で働くために必要な在留資格についてわかりやすく説明します。
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建設業界の外国人採用、どれくらい進んでいる?
データ出典:厚生労働省
建設業界では、労働者が減って人手不足が問題になっていますが、内訳を見ると外国人労働者の数は年々増加しています。
厚生労働省のデータによると、2023年には建設業で働く外国人は144,981人になりました。また、働いている事業所の数も増えており、2016年の12,911事業所から2023年には39,415事業所に増えました。
さらに、前年と比べると、建設業で働く外国人の数は24.1%増え、全体の外国人労働者数の増加率(12.4%)を大きく上回っています。
事業所数も全体では6.7%増加した中で、建設業は11.6%増加しており、建設業は他の業界よりも外国人を雇うペースが早いことがわかります。
日本政府は、働き手が足りない問題を解決するために、外国人労働者を受け入れる制度を整えています。とくに建設業は「特定産業分野」として人手不足が深刻な業界とされ、他の業界よりも優遇された制度が使われています。
そのため、今後もこの制度を活用して、外国人労働者を積極的に受け入れることが期待されています。
参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)
建設業で外国人を雇うとどんなメリットがあるの?
外国人雇用によって得られるメリットはさまざまあります。
メリット① 若い労働者を確保できる
若者は新しい技術やその応用方法に対する理解が早く、柔軟性や積極性が高いので積極的に採用したいと考える企業は少なくありません。
若い労働力を確保することが難しくなると、建設業の未来に対する不安も募ります。
日本では「少子高齢化」や「転職市場の活発化」が進み、若手社員の確保が次第に困難になっています。
しかしながら厚生労働省の発表によると、外国人労働者の数は「20〜29歳」の割合が最も多く、その数は年々増加していることがわかります(コロナ禍を除く)。
そのため若い外国人労働者を採用することで長期的に人材不足を解消でき、建設業の企業存続に良い影響を与えることが期待できます。
参考:厚生労働省 在留資格別×年齢別にみた外国人労働者数の推移
メリット② 労働意欲が高く、他の社員に良い刺激を与える
就労目的で来日した外国人の中には「日本の技術を学びたい」「家族のためにもっと稼ぎたい」と考えていて働く熱意や意欲が高い人が多くいます。その意欲は業務に対する積極性や責任感としてあらわれます。
たとえば、外国人労働者が真剣に作業に取り組む姿や、効率的に働く姿を見ることで、教える側の日本人労働者も自身の業務に対する意識を高めることができます。
その結果として、企業全体の生産性向上につながる企業も少なくありません。
メリット③ 短期間で大量募集できる
日本で暮らす外国人の中には「働きたくても働き口が見つからない」という人が多くいます。
たとえば、外国人留学生の就職に関する調査によると、日本での就職を希望している人のうち2割が就職先を見つけられていません。その理由として最も多かった回答が「外国人向けの求人が少ない」ということでした。
このような状況から、外国人向けの求人を出した企業には多くの応募者が集まる傾向があります。
限られた求人情報に対して応募者が集中している今のうちに、外国人採用を始めると大量採用のチャンスが広がります。
こういった短期間・大量採用の実績については、後項で紹介していきます。
メリット④ 助成金や補助金、支援制度が利用できる
外国人労働者を雇うことで、政府の助成金や補助金を活用でき、さまざまな経済的メリットを得ることができます。
まず、雇用にかかるコストを減らし、給与や雇用保険の負担が軽くなります。また、研修プログラムを充実させるために社内での教育に加えて、自治体が提供する日本語教育や専用の相談窓口も利用できます。
これにより、外国人労働者は仕事に早く慣れ、業務がスムーズに進みます。さらに、政府と連携することで、ビザの更新や必要書類の提出など、法的な手続きも簡単に進めることができ、安心して雇うことができます。
これらの支援をうまく活用することで、外国人労働者の雇用にかかる負担を減らし、企業のメリットを最大化できます。
建設業で外国人を採用するための準備と進め方とは?
ここからは、外国人採用の流れを簡単に説明します。
1. 受け入れ準備
雇用条件を整理する
外国人労働者の労働条件や給与をはっきりさせましょう。日本の労働基準に合った条件で、違法にならないことを確認します。
具体的には、労働時間、休日、福利厚生(社会保険や健康保険など)を整え、日本人社員と同じかそれ以上の条件にする必要があります。
必要な在留資格を確認する
仕事内容によって、外国人労働者に必要な在留資格が違います。
後で詳しく説明しますが、在留資格には、どんな仕事でもできるものや、仕事内容に制限があるもの、働けないものもあります。募集するポジションに合った在留資格を確認しておくことが大切です。
もし在留資格で許可されていない仕事をさせると、不法就労になり、企業が罰則を受けることになるので注意が必要です。
社内環境の整備
外国人労働者が働きやすい環境を作ることも大切です。とくに、チームで行動する場合は、日本人社員の考え方を整えることが必要です。
外国人労働者に対して理解を深め、異なる文化や価値観を尊重することで、現場の雰囲気が良くなります。たとえば、言葉や文化の違いに気を配り、日頃から休憩時間などに積極的に声をかける風土をつくることで、チームの仲が深まり一体感が生まれます。
2. 採用活動
求人方法の選定
外国人労働者を募集する際は、一般的な求人サイトだけでなく、外国人向けの専門の求人サイトや地域の人材紹介会社を利用するのが効果的です。
面接と選考
面接では、外国人労働者が日本の職場文化や言語にどれくらい適応できるかを評価します。
とくに、建設業では現場でのコミュニケーションが重要なので、言語能力や日本の仕事の流れに馴染めるかをしっかりと確認しましょう。
内定
面接に合格した外国人労働者には内定を出し、雇用契約書を作成します。契約書には、労働条件や給与、勤務時間、福利厚生など、重要な内容をわかりやすく書きます。
建設業では作業時間や現場での安全ルールが特に大切なので、そういった事項も記載し、双方が納得したうえで契約にサインします。
また、転職するために在留資格の変更が必要な場合があるので、その手続きは出入国在留管理庁で進めます。
3. 教育・トレーニング
社内研修の実施
外国人労働者には、建設業特有の安全教育や作業方法に関する研修を行います。
たとえば、足場の組み立てや解体時の安全ルールや重機の使い方など、現場で必要な知識や技術を丁寧に教えるようにしましょう。また、業務に必要な専門用語も、日本語のレベルに合わせて学べるようサポートすることが大切です。
自治体の日本語教育や相談窓口の活用
地方自治体が提供する外国人向けの日本語教育や、労働環境に関する相談窓口も利用することができます。
日本語に不安がある外国人労働者にとって、会社以外でもサポートを受けられることは、仕事や生活にスムーズに馴染むための助けになります。
また、外国人労働者が持っている在留資格によって必要な研修内容が異なります。
たとえば、「技能実習生」は実習プログラムに基づいた実務教育が必要ですが、「特定技能」の場合は、より高度な業務に対応できるように、技術的な訓練や日本語の向上を重視した研修が求められます。
このため、在留資格に合わせた研修プランを準備し、個々のスキルに合わせた指導を行うようにしましょう。
建設業で働ける外国人の在留資格とは?
建設業で外国人を雇用するには、以下のいずれかの在留資格を持っている人材を採用することが前提となります。
- 技術・人文知識・国際業務
- 技能
- 特定技能
- 技能実習
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
- 留学
- 家族滞在
- 文化活動
各在留資格で可能な業務範囲が異なるため、ここからはその内容について解説していきます。
技術・人文知識・国際業務
略して「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれるこの在留資格は「外国人労働者の専門性を活かすこと」を目的としています。
そのため、技術的な業務や知識を生かす業務に就くことができます。現場作業などの単純労働はできません。
【例】技術・人文知識・国際業務の業務
現場監督、施工管理、CADオペレーター、通訳・翻訳、営業、マーケティングなど
技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザってなに? 取得する条件、雇用する際のポイント、注意点について
技能
「技能」は「外国で考案された高度な技術を使って日本で働くこと」を目的とした在留資格です。
ゴシック様式やロマネスク様式、中国建築などの日本にない(外国特有の)建築を建てる場合のみ雇用でき、現場作業に就くことが可能です。
ビザを申請する際に業務内容を国に提出する必要があり、外国特有ではない建築に関する業務には従事できません。
特定技能1号・2号
「特定技能」は人手不足となっている特定産業分野において「即戦力となる外国人材を受け入れること」を目的としています。
建設業は特定産業分野に指定されており、建設土木、建築、ライフライン、設備などにおいて外国人雇用が可能です。
特定技能外国人は分野に関するある程度の知識や技術を持っている人材のため、企業内の様々な業務に就くことができます。単純労働をおこなうことも可能です。
特定技能外国人を受け入れる方法|制度の概要、受け入れまでの流れ、支援計画10項目を作成するコツや注意点を解説
技能実習1号・2号・3号
「技能実習」は途上国などの「母国で活かせる技能の習得を目指し、日本で人材を育成(実習)すること」を目的としています。
可能な業務は作業ごとに細かく分類されており、現在は90職種165作業が対象作業とされています。技術を教えるための在留資格のため、一つの作業だけを繰り返しおこなう単純労働は不可となっています。
技能実習生の受け入れが可能な90職種165作業を解説! 受け入れるメリット、特定技能への移行についても知りましょう
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者
身分系と呼ばれるこれら4つの在留資格は、就労制限がないため日本人と同じように雇用が可能です。つまり、単純労働を含めた建設業のすべての業務において就労ができます。
「身分系」の在留資格 全4種類|就労系との違い、採用するメリットについて詳しく解説
留学・家族滞在・文化活動
これら3つの在留資格は、就労により収入を得ることは原則認められていません。
ただし出入国在留管理局で「資格外活動許可証」を取得している場合は、条件付きでアルバイト雇用が可能になります。
たとえば「1週間の労働時間が28時間以下であること」という労働時間の制限がありますが、これを守れば現場での単純労働にも就くことができます。
アルバイトで採用できる在留資格は? 資格外活動許可が必要な資格はある?
建設業で外国人採用がうまくいった事例をご紹介!
ここからは、在留外国人向け求人媒体である「Guidable Jobs(ガイダブル・ジョブス)」を利用して、外国人採用に成功した事例を紹介いたします。
【事例1】即戦力人材の採用に成功!
- 掲載日数:90日
- 採用者数:1名
- 企業のサポート内容:研修期間あり、レベルに応じて昇給あり、多数の外国籍者が勤務している環境
外国人労働者は労働条件に対してとくに敏感なため、求人情報に明確な昇給基準を記載しました。
目標意識の高い人材からの応募が多く、結果的にスキルの高い人材(技術・人文知識・国際業務)の採用に成功しました。
【事例2】人口の少ない地域も、掲載後すぐに多数の応募者を獲得!
- 事業所所在地域(市区町村)の在留外国人数:約520人
- 掲載日数:90日
- 採用者数:2名
- 企業のサポート内容:未経験者大歓迎、制服・道具支給、技能手当あり、皆勤手当あり、家族手当あり
掲載開始1週間で8名の応募があり、3か月間で合計67名をご紹介。ご検討後、2名の採用が決まりました。
在留外国人の少ない地域ですが、外国人向けの求人数が少ないため隣県からの応募者も多く、最適な人材の採用に成功しました。
また、在留外国人の少ない地域に暮らす外国人は「身分系」の在留資格を持っていることが多いです。就労制限がなく、長期就労を見込めるといったメリットがあります。
【事例3】身分系在留資格を持つ、若年層の外国人の採用に成功!
- 掲載日数:90日
- 採用者数:1名
- 企業のサポート内容:未経験者大歓迎、スキルアップ応援、オンライン研修あり、免許取得費補助、福利厚生サービス利用企業
募集要項には「長く働ける方を希望」と記載。21名の応募者のなかから、1名を採用しました。
「日本語の読み書きができなくても可」といった低めの日本語要件に加え、各種サポート体制が充実していることを目立つ所に記載することで「若年層(20代)」かつ「身分系」という長期就労を見込める外国人採用に成功しました。
さいごに
企業が外国人労働者を受け入れるメリットは大きく、彼らは建設業の未来を支える大きな力になります。
雇用後に長期的に働いてもらうためにも、文化の違いやコミュニケーション方法を理解してより良い関係を築いていきましょう。