二種免許試験が20言語に対応|バス・タクシー業界で進む外国人ドライバーの採用増加とその背景、今後の動向について解説
バスやタクシーなどの旅客自動車運送業界は、深刻なドライバー不足に直面しています。
成田空港などの主要拠点ではインバウンド(訪日外国人)の増加もあり、バス・タクシー乗り場には常に長蛇の列ができるほど需要過多となっています。
地方でバスやタクシーが重要な足としての役割を担っていますが、高齢者ドライバーの増加により稼働できる人数・時間が減少しています。
このような課題に対処するため、業界では外国人労働者を積極的に採用する動きが広がっています。
目次
外国人ドライバーの受け入れを妨げているハードル
企業側が外国人ドライバーの受け入れを検討しているとしても「そもそも外国人の候補者を探すことが難しい」のが現状です。
二種免許を持っている外国人は極端に少なく、それには以下のことが要因として挙げられます。
ドライバーとして就労できる在留資格に制限がある
外国人が日本でバス・タクシーのドライバーとして働くことが可能な在留資格は、現行の法律で制限されています。適切な在留資格としては、就労制限がない「身分系」の在留資格が当てはまります。※一部の職種は「特定活動(告示46号)」がでの就労が可能です
この身分系の在留資格は、取得するまでに何年もかかる「永住者」や「その配偶者」、難民や日系人などの特別な理由があり一定の期間以上日本に住むことを前提とした外国人のみが取得できます。
つまり、バス・タクシーのドライバーに必要な知識やスキルを持っていたとしても「ドライバーとしての就労が目的」では在留資格が取れないということです。
日本でドライバーになりたいなら、まずは「身分系の在留資格を取得しなければならない」というのは外国人にとって高いハードルと言えるでしょう。
「身分系」の在留資格 全4種類|就労系との違い、採用するメリットについて詳しく解説
外国人が二種免許を取得することは難しい
日本のバスやタクシーのドライバーとして働くためには「二種免許」を必ず持っていなければなりません。
しかし、この免許の取得には以下の条件があるため、外国人が二種免許を取得することはかなり難しいといえます。
二種免許の学科試験は多言語対応していない
日本の交通法規はもちろん、危険予測や回避能力に関する知識が問われる二種免許の学科試験は、現状では日本語でしか受験できません。
日本語が堪能ではない外国人にとっては試験の難易度が高く、受験を躊躇する理由のひとつになっています。
二種免許の受験資格を得られるのは一種免許の取得から1年後
二種免許の受験資格を得るためには、まず一種免許を取得してから(最短で)1年間の経験が必要です。
海外の運転免許から日本の一種免許に切り替え、その後さらに受験資格を得るまでの待機期間が必要なため、すぐに働けないという理由で日本での就労を諦める外国人が多くいます。
参考:警察庁 外国の運転免許をお持ちの方 ※一種免許
参考:国土交通省 「旅客自動車運送事業用自動車の運転者の要件に関する政令の一部を改正する政令」を閣議決定
外国人ドライバーを採用するバス・タクシー会社は増加している
前述の障壁がありながらも、近年は日本のバス・タクシー業界で外国人を積極的に採用する動きが広がっています。
先駆けは「身分系」の在留資格を保持する外国人
現段階でバス・タクシードライバーとして就労が可能な「身分系」の外国人を採用している企業は多く存在します。
こういった企業に話を聞くと、外国人ドライバーは日本人と比べても遜色なくパフォーマンスを発揮しているとのことです。
当初は若干の不安を感じていた企業も、異文化に対する理解が深く、乗客に対して思慮深く接することができる外国人ドライバーを見てその不安が払拭されています。
また、外国人ドライバーには以下のような特徴があります。
環境の変化に対する適応力が高い
外国人労働者は母国での生活や移住を経ているため、生活全般において柔軟性や適応力を身につけています。
たとえば近年はバスやタクシーでも、タブレットや専用端末などを使ったキャッシュレス決済の利用者が増加しています。こういった環境の変化に対して拒否感を持つ外国人は少なく、わからないことは調べたり聞いたりして自ら解決していきます。
多言語対応でインバウンド層を取り込める
日本は年々、訪日外国人(インバウンド)が増加しています。外国人観光客は移動手段としてバスやタクシーを利用することも多く、これらの車内における多言語対応が重要視されています。
また、外国人目線で日本の魅力やおすすめを紹介できることもあり、インバウンド層に対して上質なサービスを提供する貴重な人材となるでしょう。
タクシー会社で活躍中の外国人はどんなところがすごい? アサヒ交通株式会社さまに聞きました
「就労系」の在留資格にドライバー職が追加見込み
追い風となるのは在留資格「特定技能」の制度の見直しです。
特定技能とは、人手不足となっている特定産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れることを目的とした在留資格です。
この特定産業分野にバス・タクシードライバーを含む「自動車運送業」の追加が検討されています。
追加が実現すると「ドライバースキルを持っている外国人」の受け入れが大幅に進むことになります。
参考:朝日新聞デジタル 深刻化する運転士不足 外国人労働者の特定技能、4分野の追加を検討
在留資格「特定技能」についてぜんぶわかる|制度の概要・受け入れや支援の方法・関連機関の役割をまるっと解説
二種免許試験が20か国の言語に対応する
二種免許の取得において、今まで日本語でしか受験できなかった学科試験がついに多言語対応することになりました。
対象の言語は、以下の20言語です。
英語、ポルトガル語、スペイン語、ロシア語、ウクライナ語、
中国語、ベトナム語、韓国語、タガログ語、ネパール語、インドネシア語、ミャンマー語、タイ語、ヒンディー語、ウルドゥー語、クメール語、モンゴル語、シンハラ語、
ペルシャ語、アラビア語
これにより、二種免許を取得することが外国人にとってより身近なものとなります。
また、二種免許の受験資格を得るまでの待機期間(現在は最短で1年)の短縮も検討されています。
待機期間の短縮は、労働力の供給が早く進むことに加えて、キャリアアップを目指す外国人労働者を後押しできるというメリットがあります。
さいごに
異なる国籍や言語を話す外国人がバスやタクシーのドライバーとして活躍することで、業界全体がより国際的で多様性に富んだ環境になります。
外国人ドライバーの採用を通して、労働力の確保や地域社会の発展を目指しましょう。