介護士として雇用できる外国人の在留資格は? 4種類のビザの取得要件、介護業務の範囲についてわかりやすく解説します
介護業界では深刻な人手不足がつづいており、外国人材の雇用がますます注目されています。
この記事では、介護業界で外国人を雇用する際のポイントや、今後の介護業界での外国人の受け入れ方針について紹介します。
目次
外国人介護職員の在留資格は4種類!
まず結論からはじめると、介護業界で雇用できる外国人は「介護」「特定活動(EPA)」「特定技能1号」「技能実習」の4つ在留資格のいずれかを持っている必要があります。
これらの在留資格ごとにできる仕事の内容は異なります。条件は技能のレベルや日本語の能力、どのくらい日本に滞在できるかなど、在留資格の目的に応じて決められています。
ここからは4種類の在留資格について、くわしく解説していきます。
在留資格「介護」
「介護」という在留資格は、専門的・技術的な分野で外国人を受け入れるための制度です。質の高い介護を提供するために、介護福祉士資格(登録)の取得が重要視されています。
外国人にとって「介護」の在留資格は、来日前や来日してすぐに取得できるものではありません。取得するにはおもに2つの方法があります。
ひとつめは「留学」で来日し、大学や専門学校などの介護福祉士養成施設で学んでから、介護福祉士資格を取得し、そのあとで「介護」の在留資格に切りかえる方法です。
ふたつめは「特定技能1号」などの在留資格を使って介護施設で働きつつ、介護福祉士資格を取得し、そのあとで「介護」の在留資格に切りかえる方法です。
介護の取得要件と特徴
項目 | 内容 |
学歴・技能要件 | 以下2つを満たしていること ・日本で2年以上の介護福祉士養成施設を卒業している、または介護施設等で3年以上の実務経験がある ・介護福祉士資格を取得(登録)している |
日本語要件 | – |
在留期間 | 3か月、1年、3年、5年のいずれか(更新回数の制限なし) |
転籍(転職) | 可(介護業界のみ) |
家族の帯同 | 可 |
業務の範囲 | 介護業務全般 |
「介護」の在留資格を持つ外国人の特徴は、採用時にすでに介護福祉士の資格を持っていることです。
彼らは介護現場で必要な専門知識と技術を備えているので、職場での即戦力になることができます。
ほかの在留資格とくらべて業務の制限が少なく、訪問介護や夜勤など、幅広い仕事に対応できるのがポイントです。
在留資格「特定活動(EPA看護師、EPA介護福祉士及びそれらの候補者)」
日本はインドネシア、フィリピン、ベトナムとのあいだで、EPA(経済連携協定)を締結しています。
この協定には、日本の介護施設で働きながら研修を受け、日本の介護福祉士の資格を取得することを目指す外国人を支援する制度が含まれています。
この制度にもとづいて、日本での在留資格として「特定活動(EPA看護師、EPA介護福祉士およびそれらの候補者)」が設定されています。
この在留資格を持つ外国人は、以下の2つのカテゴリーにわけられます(介護分野をのぞく)。
- EPA介護福祉士:日本の介護福祉士国家試験に合格した外国人
- EPA介護福祉士候補者:介護福祉士国家試験の合格を目指して勉強しながら、介護施設で研修を行っている外国人
EPAの取得要件と特徴
EPA介護福祉士候補者 | EPA介護福祉士 | |
学歴・技能要件 | 【インドネシア】 以下2つを満たしていること ・3年以上の高等教育機関を卒業している ・インドネシア政府から介護士として認定されている または、以下を満たしていること ・インドネシアで3年以上の看護学校を卒業している【フィリピン】 以下2つを満たしていること ・4年制大学を卒業している ・フィリピン政府から介護士として認定されている または、以下を満たしていること ・フィリピンで4年制の看護学校を卒業している【ベトナム】 ・3年制または4年制の看護課程を修了している | 以下2つを満たしていること ・EPA介護福祉士候補者としての就労、就学を終えている ・介護福祉士資格を取得(登録)している |
日本語要件 | 【インドネシア】 日本語能力試験(JLPT)N4以上【フィリピン】 日本語能力試験(JLPT)N5以上【ベトナム】 日本語能力試験(JLPT)N3以上 | – |
在留期間 | 原則4年 | 1年、3年のいずれか(更新回数の制限なし) |
転籍 | 原則不可 | 可(介護業界のみ) |
家族の帯同 | 不可 | 可 |
業務の範囲 | 介護業務(訪問系サービス以外) | 介護業務全般 |
必要なサポート | ・訪日前日本語研修 ・訪日後日本語研修 ・介護福祉士国家試験に向けた学習サポート | – |
特定活動(EPA)を受け入れる場合は、調整機関である公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)の支援を受けることができます。
具体的には、就労・研修に関する相談を受け付けたり、候補者に対して学習支援やメンタルヘルスケアなどがおこなわれます。
EPA介護福祉士候補者は、介護福祉士国家試験を受けるチャンスが2回あります。
介護福祉士国家試験に合格すると「EPA介護福祉士」になりますが、「介護」へ在留資格を変更し、永続的な就労やキャリアアップを目指すことも可能です。
参考:公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)
参考:厚生労働省 EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の受入れについて
在留資格「特定技能1号」
「特定技能」は日本の少子高齢化による人手不足が深刻な特定の産業分野(2024年1月時点で12分野)で、即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格です。
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類がありますが、介護分野が含まれているのは「特定技能1号」だけです。
特定技能1号の取得要件と特徴
項目 | 内容 |
学歴・技能要件 | 以下いずれかを満たしていること ・介護技能評価試験に合格している ・「介護職種・介護作業」で第2号技能実習を修了している ・介護福祉士養成施設を卒業している |
日本語要件 | 以下2つを満たしていること ・日本語能力試験(JLPT)N4以上、または、国際交流基金日本語基礎テストに合格している ・介護日本語評価試験に合格している ※学歴・技能要件の種類によっては免除される場合があります |
在留期間 | 通算5年 |
転籍(転職) | 可(介護業界のみ) |
家族の帯同 | 不可 |
業務の範囲 | 介護業務(訪問系サービス以外) |
必要なサポート | 生活オリエンテーションや日本語学習など、義務的支援10項目 |
「介護」の在留資格を持つ外国人は、専門的な知識や技術を持っているため、採用後すぐに活躍が期待できます。
日本での生活サポートは必要ですが、通算5年間の在留が可能です。そのあいだに介護福祉士国家試験に合格すれば、在留資格を「介護」に変更することで、長期間働くことやキャリアアップを目指すことができます。
参考:厚生労働省 介護分野における特定技能外国人の受入れについて
在留資格「技能実習」
技能実習制度は発展途上国のひとびとが日本の技術を学び、帰国後にその技術を活かすことを目的としています。
この制度では、実習内容を「必須業務」と「関連業務」にわけています。
たとえば必須業務としては入浴、食事、排泄の介助など、習得するべき介護業務が含まれます。
いっぽうで関連業務には、洗濯や調理、記録作成など、必須業務に関連した一般的な作業が含まれます。
技能実習の取得要件と特徴
技能実習1号 | 技能実習2号 | 技能実習3号 | |
学歴・技能要件 | 実習意欲があること | 技能実習1号を修了していること | 技能実習2号を修了していること |
日本語要件 | 日本語能力試験(JLPT)N4、またはこれと同等以上の試験に合格していること | 日本語能力試験(JLPT)N3、またはこれと同等以上の試験に合格していること | – |
在留期間 | 1年 | 2年 | 2年 |
転籍 | 原則不可 | 原則不可 | 原則不可 |
家族の帯同 | 不可 | 不可 | 不可 |
業務の範囲 | 第1号技能実習で指定されている介護業務※1 | 第2号技能実習で指定されている介護業務※1 | 第3号技能実習で指定されている介護業務※1 |
必要なサポート | 生活オリエンテーションや日本語学習、受験手続き支援など※2 | 生活オリエンテーションや日本語学習、受験手続き支援など※2 | 生活オリエンテーションや日本語学習、受験手続き支援など※2 |
※1 参考:一般社団法人シルバーサービス振興会 介護職種(介護業務)一覧
※2 参考:厚生労働省:技能実習生に対する支援・保護方策
技能実習生は、日本で長く働くことが目的ではありませんが、日本で働くなかでスキルを身につけることで、在日中に企業を支える重要な存在です。
日本での生活サポートや学習支援を受けることで、最長で5年間、日本に滞在することができます。
その間に「特定技能」へ移行すれば、さらに長く働いたり、キャリアアップを目指したりすることも可能です。
外国人介護士を雇用する際の5つのポイント
① 在留資格の種類を確認する
外国人介護士を雇うときは、その人が持っている在留資格が介護の仕事に適しているかを確認することが大切です。
在留資格には「特定技能」や「介護」などがあり、資格によってできる仕事や滞在できる期間が異なるので注意が必要です。
また、在留期間の更新手続きも忘れずにおこないましょう。
② 適切な雇用契約を結ぶ
外国人介護士を雇うときには、正しい内容の雇用契約を結ぶことが必要です。
契約書には、仕事内容や基本給はもちろん、諸手当や時間外労働に対する割増賃金、支払日などなるべく細かく記載しましょう。
また、この金額は日本人労働者と同等以上の給与水準であることが前提です。
外国人が雇用条件をただしく理解できる書類を作成し、トラブルが起こらないように説明することが大事です。
③ 外国人雇用状況の届出を忘れない
外国人労働者を雇ったときは、必ずハローワークへ「外国人雇用状況届出書」を提出することが法律で決められています。
この届出は、働き始めたときだけでなく、退職するときにも必要です。
提出しないと罰則を受けることがあるので、忘れずに手続きをおこないましょう。
④ 外国人も社会保険の加入が必須
外国人労働者も、日本の社会保険に加入する必要があります。
社会保険には、健康保険や年金、労災保険などがあり、加入することで外国人も日本人と同じように保険のサービスを受けることができます。
⑤ 職場環境を整える
外国人労働者が安心して働けるように、職場の環境を整えることがとても大切です。言葉の違いや文化の違いに配慮し、サポート体制を作るようにしましょう。
たとえばマニュアルをわかりやすくする、多言語対応の相談窓口を設けるなど、働きやすい環境を作ることで仕事の効率も上がります。
これからの介護業界の外国人雇用について
介護業界の現状と、外国人の受け入れが今後どのように進展していくのかを見てみましょう。
人手不足は深刻化する予想
厚生労働省は2023年度に、「約233万人の介護職員が必要だ」と発表しました。
しかし、同年度の介護職員数は約214.9万人にとどまり、必要数を大幅に下まわる結果となりました。
さらに2025年度には約243万人の介護職員が必要とされており、日本の高齢化が進んでいることから今後も人手不足が深刻化すると考えられています。
参考:厚生労働省 第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
外国人介護人材の受け入れ数は増加中!
介護業界では、外国人の受け入れが積極的に進められています。
以前は介護業界で働くには在留資格「留学」で来日し、介護福祉士養成施設で学んだあとに「介護」に切り替えるのが普通でした。
しかし特定技能制度やEPAにより、実務経験を積みながら介護福祉士の資格を取得し、「介護」に切りかえる人が増えています。
このような制度の改正により、外国人介護人材の総受け入れ数と「介護」ビザの取得者数は、どちらも増えています。
これから先も外国人材が介護業界で日本の人手不足を補うために制度の改革が進められていくでしょう。
さいごに
介護施設が求める介護レベルに合った人材を採用するためには、在留資格の条件や業務範囲をしっかり理解しておくことが重要です。
人手不足を解消し、すぐれた外国人材を雇用したい方は、在留外国人特化型の求人サイト「Guidable Jobs(ガイダブル・ジョブス)」の利用をご検討ください!