「フィリピン人を採用したいけれど、どのビザを確認すればいいのか分からない」「社内に専門の担当者がいないから、手続きや書類が心配」――そんな声をよく耳にします。

この記事では、外国人採用が初めての方にも理解しやすいように、在日フィリピン人に関わるビザの種類を整理しました。
就労が可能かどうかの見分け方に加え、変更や更新の手順、費用の目安も紹介します。

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在日フィリピン人に多い在留資格は?

フィリピンの国旗

まずは全体像を押さえておきましょう。フィリピン人の方は「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」など、就労制限のない在留資格を持つ人が多いのが特徴です。

一方で、就労系の資格では「技能実習」と「特定技能」が中心を占めています。「技術・人文知識・国際業務」を持つ人は比較的少数派です。最初に「働けるかどうか」を確認しておくと、採用できるかの判断がずっと分かりやすくなります。

フィリピン人に多いビザの種類

  • 永住者:141,798人(41.5%)
  • 定住者:62,458人(18.3%)
  • 日本人の配偶者等:26,300人(7.7%)
  • 技能実習:40,700人(11.9%)
  • 特定技能:28,234人(8.3%)
  • 技術・人文知識・国際業務:10,552人(3.1%)
  • 特定活動:4,979人(1.5%)
  • 留学:3,007人(0.9%)
  • その他:23,490人(6.9%)

ポイント

  • 「永住」「定住」「配偶者」などの身分系資格が全体の約67%を占めています。職種に制限がなく、配属やシフトの調整がしやすい点が強みです。
  • 就労系は「技能実習」と「特定技能」でおよそ20%。現場の人材確保に直結する資格といえます。
  • 採用時には、在留カードで「資格名」「働けるかどうか」「在留期限」をあわせて確認すると安心です。

参考:出入国在留管理庁 令和6年末現在における在留外国人数について

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➡︎外国人採用に必須知識!在留資格完全ガイド

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どのビザなら働ける? 目的別の在留資格の選び方

まずは目的に合わせて、どの在留資格が必要なのかを整理しておきましょう。
自社の募集内容と候補者の在留状況を照らし合わせることで、取るべき手続きがはっきり見えてきます。

【就労系】技術・人文知識・国際業務

専門職や事務職でフィリピン人を採用するときに使われる代表的な在留資格です。
仕事内容と学歴や職歴が合っていることが条件で、給与は日本人と同等以上でなければなりません。

特徴

  • 通称「技人国」と呼ばれる就労資格
  • オフィスワーク専門知識を活かす仕事に対応
  • 長期的なキャリア形成を前提にした採用に向いている

採用時のチェックポイント

  • 仕事内容と学歴・職歴が一致しているか
  • 給与が日本人と同等以上であるかどうか
  • 職務内容を明記した雇用契約書を準備する

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【就労系】特定技能

特定技能外国人の画像

人手不足の分野で、フィリピン人が即戦力として働ける在留資格です。技能試験と日本語力の証明が必要で、受け入れる企業には生活支援の義務も課されています。

特定産業分野(16分野)

介護/ビルクリーニング/工業製品製造業/建設/造船・舶用工業/自動車整備/航空/宿泊/農業/漁業/飲食料品製造/外食業/自動車運送業/鉄道/林業/木材産業

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特徴

  • 1号2号があり、2号は家族帯同や更新制限がない
  • 技能試験日本語試験の合格が必須
  • 更新や在留継続には企業の支援体制が欠かせない

採用時のチェックポイント

  • 技能試験の合格証明
  • 日本語力(おおむねN4レベル)の確認
  • 生活支援や学習支援の準備(相談窓口や研修など)
  • フィリピンの送り出し機関との連携

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【就労系】技能実習

技能実習は「日本で学んだ技術を帰国後に活かすこと」を目的とした制度です。
フィリピン人にも広く利用されていますが、今後は新制度「育成就労」に移行する流れがあります。

特徴

  • 製造・建設・農業などが中心分野
  • 技能移転を目的とするため、就労範囲は限定的
  • フィリピンの送り出し機関との協力が必須

採用時のチェックポイント

  • 技能習得計画を作成すること
  • 送り出し機関との連携体制を確認すること

新制度「育成就労」

  • 2024年に創設された、技能実習の後継制度
  • 特定技能への移行をスムーズにする仕組み
  • 企業と本人の双方にキャリアの見通しが立てやすい

【家族帯同目的】家族滞在

日本で暮らす家族に同行するための資格です。本人は原則として就労できませんが、資格外活動許可があれば週28時間以内でアルバイトが可能です。

特徴

  • 配偶者や親に帯同するための在留資格
  • 家族単位で生活できるので安定しやすい
  • 長期的に滞在するケースも少なくない

採用時のチェックポイント

  • 資格外活動許可の有無を確認すること
  • 勤務時間の上限を守ること

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【身分系】永住者・定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等

永住者や定住者は就労制限がなく、自由度の高い資格です。フィリピン人にはこの在留資格を持つ人が多く、日本人と同じ感覚で雇用管理ができます。
また、日本人や永住者と結婚しているフィリピン人に与えられる配偶者ビザもあり、こちらも就労に制限はありません。即戦力として活躍しやすい層といえるでしょう。

特徴

  • 就労制限がない
  • 職種雇用形態を問わず働ける
  • 雇用管理は日本人と同じように可能
  • 永住者は長期滞在が前提、定住者は日系人など個別事情に基づく
  • 配偶者は婚姻関係の継続が根拠になる

採用時のチェックポイント

  • 日本人と同様に管理できるが、在留資格の確認や届け出は必要

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【短期】短期滞在(観光・親族訪問)

観光や親族訪問を目的とする資格で、就労はできません。滞在できるのは最長90日までです。

特徴

  • 滞在期間は15〜90日以内
  • 招へい理由書や滞在予定表が必要な場合がある
  • 面接や見学は可能だが、実際に働くことは認められない

採用時のチェックポイント

  • 短期滞在から就労資格への切替は原則不可
  • 就労予定がある場合は、海外でのCOE取得と査証申請が必要

参考:外務省 短期滞在査証(ビザ)手続きチャート

在留資格の新規取得・変更・更新の流れ

ここでは在留資格を「新しく取得する場合」「日本にいる状態で切り替える場合」「同じ資格を延長する場合」の3つに分けて整理します。
フィリピン人を採用する際に、どのケースに当てはまるのかを理解しておけば、スケジュール調整や書類準備がずっと進めやすくなるでしょう。

新規取得(海外からの申請とCOEの流れ)

フィリピンから人材を新しく呼ぶ場合は「新規取得」が必要です。
日本の企業が在留資格認定証明書(COE)を申請し、それをもとにフィリピンの大使館や領事館で査証申請を行います。

申請の手順

  1. 企業が日本でCOEを申請(職務内容や支援体制を示す)
  2. 入管庁からCOEが交付される
  3. 候補者がフィリピンで査証申請(日本大使館・領事館)
  4. 査証が発給された後に来日 → 在留カードが交付される

採用担当者が覚えておくこと

  • 特定技能や技能実習(育成就労を含む)は新規取得のケースが多い
  • 書類には「職務内容」「給与条件」「支援計画」を一貫して書く必要がある
  • 入国まで数か月かかるため、採用計画には余裕を持たせたい

在留資格の変更

すでに日本に住んでいるフィリピン人が、活動内容を変える場合には「変更」が必要です。
たとえば留学から就労、技能実習から特定技能への切り替えがよく見られます。

よくあるケース

  • 留学 → 技術・人文知識・国際業務
  • 技能実習 → 特定技能
  • 家族滞在 → 就労系ビザ など

採用担当者が覚えておくこと

  • 短期滞在から就労資格への切替は原則認められていない
  • 雇用契約と申請書に記載する職務内容は必ず一致させる
  • 配属部署や使用言語を数値化して示すと審査が通りやすくなる

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在留期間の更新

同じ資格で在留を続けたい場合は「更新」が必要です。期限を過ぎてしまうと不法滞在になるため、必ず余裕をもって準備を始めましょう。

更新の手順

  1. 在留期限の3か月前から申請可能
  2. 必要書類を準備(申請書、在留カード、パスポート、雇用契約書など)
  3. 入管局で申請(本人または代理人)
  4. 審査には1〜3か月ほどかかる

採用担当者が覚えておくこと

  • 契約内容が変わる場合は、新しい雇用契約書を添付する
  • 給与や職務内容に変更がある場合は、理由書で説明することが求められる
  • 在留カードの有効期限は社内で一覧管理しておくと安心

申請手数料

2025年4月から申請手数料が改定されました。
変更と更新はいずれも6,000円に統一され、オンライン申請では5,500円と少し安くなっています。永住許可は10,000円で、他より高めの設定です。
いずれも収入印紙で納付する必要があり、オンライン申請でも同様です。

手続き金額支払方法
在留資格新規取得(COE申請)無料 ※査証発給時に別途費用が発生する場合あり
在留資格変更6,000円/オンライン申請は5,500円収入印紙
在留期間更新6,000円/オンライン申請は5,500円収入印紙
永住許可10,000円 ※オンライン不可収入印紙

オンライン申請のポイント

  • 企業の事前登録が必要
  • 一部手続は対象外
  • 窓口に行かずに手続きできるので効率的
  • ただし納付は収入印紙が必須(現時点ではシステム決済は不可)

申請が不許可になる例

不許可の原因は大きく4つに分けられます。仕事内容の不一致、書類不備、素行や納税の問題、給与水準の不合理です。
多くは採用側の準備不足で防げるものなので、早めに確認しておくことが重要です。

典型例

  • 職務不一致:技人国なのに単純作業を任せている
  • 書類不備・矛盾:雇用契約と申請書の内容が違う
  • 素行・納税の懸念:税金や社会保険に未納がある
  • 給与水準の不合理:同じ仕事をする日本人より著しく低い給与

採用担当者ができる対策

  • 契約書・求人票・申請書の内容をそろえ、一貫性を持たせる
  • 理由書には「雇用の必要性」を一文添える
  • 本人と一緒に納税や社会保険の状況を確認する
  • 本人への説明は日本語に加え、やさしい日本語を使って誤解を防ぐ
  • 不測の事態も考え、早めに準備を始める
  • 人事・総務・現場でチェック体制をつくり、書類の整合性を確保する

参考:出入国在留管理庁 在留手続

在留資格の比較表

在留資格の審査完了 イメージ画像

ここでは代表的な在留資格を一覧表でまとめました。
働けるかどうか、家族を呼べるか、更新の条件など、知っておきたいポイントを一目で確認できます。気になる資格があれば、まずはこの表でチェックしてみましょう。

在留資格就労可否主な要件更新可否家族帯同
技術・人文知識・国際業務職務に合えば可専門分野の学歴や職歴と仕事内容の一致可(無期限)
特定技能指定分野のみ可技能試験+日本語力(N4程度)1号:可(通算5年まで)
2号:可(無期限)
2号のみ可
技能実習指定分野のみ可技能移転を目的とした計画1号→2号→3号へ段階更新可不可
家族滞在原則不可(資格外活動で週28時間まで可)家族に帯同する必要性可(無期限)
留学原則不可(資格外活動で週28時間まで可)学校に在籍し、学費や生活費を支払えること可(在学期間内)
永住者制限なし長期在住・素行良好・自立した収入更新不要(無期限)※在留カードは有効期限あり
定住者制限なし個別事情(日系人やその家族など)可(無期限)
日本人の配偶者等制限なし実際に婚姻生活を送っていること可(無期限)
永住者の配偶者等制限なし実際に婚姻生活を送っていること可(無期限)
短期滞在不可観光や親族訪問など90日以内不可不可

よくある質問(FAQ)

Q. 在日フィリピン人を採用する場合、注意点はありますか?

A. 採用では在留資格の確認に加えて、契約内容の説明や定着支援まで意識することが大切です。

外国人を採用するときは、まず在留カードを確認し、就労が可能かどうかを確かめることから始まります。
ただし、それだけでは十分ではありません。契約条件をやさしい日本語で説明したり、生活面を支える仕組みを整えたりすることも必要です。
文化や習慣のちがいから誤解が生まれることがあるため、事前の丁寧なコミュニケーションが定着につながります。

Q. フィリピン人のビザはどのように確認すればいいですか?

A. 在留カードの表と裏をあわせて確認するのが基本です。

表面には在留資格の種類と期限、裏面には就労制限や資格外活動の許可が書かれています。コピーをとって保管するだけでなく、パスポートを本人と一緒に確認しておくと安心でしょう。
採用後は在留期限を社内でリスト化し、期限切れ前に更新を促す仕組みを整えておくとトラブルを防げます。

Q. 永住者や定住者はどんな仕事でも働けますか?

A. 永住者や定住者には就労制限がなく、基本的にどんな仕事でも可能です。

在日フィリピン人の中でも、こうした「身分系」のビザを持つ人は多く、採用する企業にとっては雇用管理がしやすい層といえます。職種や業種の制限はなく、日本人と同じ条件で雇うことができます。
ただし永住者の場合でも、在留カードには有効期限があるため、更新漏れが起きないよう社内で管理しておくことが安心につながります。

Q. 就労系のビザはどこまで働けますか?

A. ビザの種類ごとに働ける範囲が決められています。

たとえば「技術・人文知識・国際業務」は、学歴や職歴に合った専門的な仕事に限られます。
「特定技能」は介護や外食、製造などの16分野に限定され、「技能実習」は技能を学んで帰国後に活かすことを目的とした仕事に限られています。
そのため採用時には、職務内容が資格に合っているかどうかを求人票や契約書に具体的に書くことが欠かせません。

さらに詳しく知りたい方は、関連する記事も参考にしてください。

日本の就労ビザとは|種類・要件・申請の流れを解説【2025年最新】

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Q. ビザ更新はいつから準備すればいいですか?

A. 在留期限の3か月前から申請できるため、その時期を目安に準備を始めましょう。

更新には申請書や在留カード、パスポート、雇用契約書、理由書、そして納税や社会保険の証明など、多くの書類が必要です。
もし期限を過ぎてしまうと不法滞在となるため、リスト化して社内で管理しておくことをおすすめします。
余裕をもって準備すれば、追加で書類を求められた場合にも落ち着いて対応できるでしょう。

さいごに

在日フィリピン人のビザは種類によって働ける範囲や更新の仕方がちがいますが、基本を押さえておけば採用は決して難しくありません。
大切なのは、在留カードで就労の可否を確認すること、契約内容をやさしい言葉で説明すること、そして在留期限をきちんと管理することです。

途中で不安に感じることがあっても、一つずつ確認すれば安心して進められます。

お困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。外国人採用のプロが丁寧にサポートします。

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