外国人の社会保険加入は必要なの?アルバイトのときにも必要になる条件とは?社会保障協定についても解説
外国人を雇用する際に社会保険加入が必要かどうか疑問に思う企業や採用担当者も多くいると思います。はじめて外国人労働者を採用する際には「そもそも、外国人労働者に社会保険の加入は必要なの?」と疑問を持ちますよね。
外国人労働者の社会保険加入は、ビザの取得や更新と同じくらい重要な問題です。うっかり見落としがないように注意が必要です。人口減少を背景として外国人を採用する企業が増えています。ぜひ外国人労働者に対する社会保険について、理解しておきましょう。
この記事では外国人を雇用する際に覚えておくべき、社会保険についてくわしく解説いたします。
目次
外国人は社会保険加入しなくていい?
社会保険といえば、日本国民の健康や生活を保障するための制度と考えていませんか?
実際のところはもし外国人を雇うのであれば、どんな雇用形態であっても、社会保険への加入が必要です。
ただし保険の種類によっては、社会保険の加入対象外になるケースもあります。
不要なトラブルを避けるためにも、雇用者は外国人労働者への社会保険手続きや給付について、基礎的な知識をつけておきましょう。
社会保険について知っておきたい基本
まず、社会保険とはどんなものかを確認しましょう。
社会保険にはおもに以下の4種類があります。
- 健康保険:病気やケガによってかかる医療費を軽減する制度
- 厚生年金保険:老齢・障害・死亡による収入減少を補償する制度
- 雇用保険:失業した場合の生活や雇用の援助をする制度
- 労災保険:業務中や通勤中の災害による傷病などを補償する制度
つづいて保険の種類別に、加入の必要性や加入条件をご紹介いたします。
外国人は健康保険に加入する必要あり?
健康保険は、外国人であっても加入する必要があります。
具体的には以下の方が対象です。
- 労働者が日本に3ヶ月以上滞在する予定であること
- 法人企業である、もしくは個人事業主で5人以上雇用者がいること
病気や事故で治療が必要になった場合、経済的負担を軽減できる健康保険への加入は外国人労働者が安心して働くために必要です。
加入条件を満たす場合には、かならず手続きをしておきましょう。
外国人は厚生年金保険に加入する必要あり?
厚生年金保険も健康保険と同様に加入する必要があります。
なかには「健康保険には加入したいけれど、厚生年金には加入したくない」と主張する方もいるようです。
厚生年金は国民年金と並んで、日本の社会保障制度の中でももっとも大きな公的年金制度のひとつです。
対象となる企業の会社員が加入して、労働者と雇用主が年金保険料を折半して負担することで、労働者が65歳以上(2023年現在)になったときにに、年金を受け取ることができます。
【◉外国人労働者の年金についてくわしく知りたい方がこちら!】
外国人労働者は年金加入するの?日本労働者との違い、外国人特有の制度を解説!
外国人は雇用保険に加入する必要あり?
雇用保険への加入は、以下の条件にあてはまる場合に必要です。
- 1週間の労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること(注)
(注) 適用要件について
31日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き、この要件に該当します。
例えば次の場合には、雇用契約期間が31日未満であっても、原則として31日以上の雇用が見込まれるものとして雇用保険が適用されます。
◯雇用契約に更新する場合がある旨の規定があり、31日未満での雇止めの明示がないとき
◯雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約で雇用された労働者が31日以上雇用された実績があるとき
(出典:厚生労働省:「外国人労働者の雇用保険手続きをお忘れなく!」)
ただし上記に当てはまっても、ワーキングホリデー制度を利用している場合は雇用保険の加入対象にはなりません。(※ワーキングホリデーに関しては、来日する目的が「就労」ではなく「休暇」のため、雇用保険の対象になりません。)
留学の場合は、全日制の教育機関に通っていると雇用保険の加入対象外となります。
定時制高校や夜間大学、通信教育の場合は加入対象です。
外国人は雇労災保険に加入する必要あり?
労災保険は、労働形態や国籍に関係なく、加入が義務づけられています。
労災保険に未加入の状態で労災事故が起きた場合、雇用者は未加入期間をさかのぼって保険料を支払うとともに、給付額の40~100%の支払いが必要です。
労災保険の未加入は、あとになって不要な負担やトラブルにつながりかねません。
もしも雇った外国人が不法労働者だった場合でも、労災保険は適用されるためかならず加入しましょう。
外国人の社会保険加入に必要な書類について
外国人も日本人同様に社会保険に加入する必要があることがわかったと思います。そこで外国人の社会保険加入に必要手続きは日本人と同じなのかという疑問が出てくるのではないでしょうか。ここでは、外国人が社会保険に加入する際に必要になる手続きについてご紹介します。
健康保険・厚生年金加入に必要な手続き
外国人が健康保険、厚生年金に加入する際には、事業主が「被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出する必要があります。外国人と一括りにいっても、短期在留者と長期在留者の外国人で必要となる書類はことなります。短期在留者の外国人は運転免許書などの本人確認書類を所有していない可能性が高いです。
そのような場合には、パスポートの身分事項ページの写しなどの提出が必要となります。
外国人は扶養手続きは可能なのか
外国人就労者の家族も扶養として手続きすることは可能です。もし外国人就労者に被扶養者がいる場合や追加があった際は、事業主をとおして日本年金機構へ提出します。
しかし、外国人就労者の扶養手続きには条件もあります。日本国内で就労しており、住所がある場合でも「特定活動」ビザで滞在している外国人は該当しないという違いがあります。
外国人の社会保険料はいくらなのか
外国人の社会保険料は、日本人と同額です。外国人だから日本より高いや、安いといった金額の差異はなく、日本人と同じ金額割合の社会保険料となります。
▼外国人の社会保険加入手続きに関してはこちら!
日本年金機構
社会保障協定とは?社会保険料が免除される?
社会保証協定とは、外国人労働者による社会保険料の二重加入や厚生年金のかけ捨てを防止するための制度です。労働者が自国で社会保険に加入していると、日本でも社会保険に入ると二重加入になるため、日本では社会保険に加入しなくていい場合があります。
外国人労働者を雇用する場合は、労働者の出身国が社会保障協定の結ばれている国であるかを確認しましょう。社会保障協定が結ばれている国から来ている人であれば、日本での社会保険加入が不要なこともあります。
日本と社会保障協定を締結している国は、2022年6月1日時点では23カ国です。社会保障協定の内容は国によって違うので、事前に確認しておきましょう。
最新の情報は「こちら(日本年金機構:社会保障協定)」で確認していただければと思います。
アルバイトでも外国人の社会保険加入は必要?
外国人の社会保険加入は、一定以上の業務をする場合であれば、正社員だけではなくアルバイトやパートタイマーの場合でも加入する必要があります。
具体的には、労働時間と労働日数が一般社員の3/4以上あれば、アルバイトやパートタイマーでも社会保険の加入が必要です。
3/4に満たない場合でも、下記の条件にひとつでも当てはまる場合は、社会保険加入の対象となります。
- 1週間の労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上の予定であること
- 月額の賃金が8.8万円以上であること
- 学生ではないこと
- 被保険者数が常時501人以上の企業に勤めていること
この条件にひとつでも当てはまれば、外国人労働者がアルバイトやパートタイマーであっても社会保険に加入する必要があります。
外国人は帰国時に厚生年金をもらえる?
外国人労働者は社会保険に加入したからといって、「帰国できない」ということはまったくありません。
仕事をやめて帰国する場合、厚生年金保険の脱退一時金の請求や、日本の老齢厚生年金を受給できる場合もあります。
ここでは外国人労働者が退職して帰国した場合の、脱退一時金と老齢厚生年金についてご説明いたします。
脱退一時金とは?
脱退一時金は、厚生年金保険に6ヶ月以上の加入期間があれば、納付期間に応じて36ヶ月を上限に受け取ることが可能です。ただし、脱退一時金が請求できる期間は2年以内です。
年金の受給権がある人や、障害手当金を受給している場合は、脱退一時金の受け取りができません。
請求できる期間が制限されているため、その旨を労働者に伝えておきましょう。
帰国しても老齢厚生年金は受給できる?
外国人労働者が退職して帰国した場合でも、老齢厚生年金は受給できます。
受給条件は「厚生年金保険料の支払い期間が10年以上ある場合」です。
ただし脱退一時金の支給を受けた場合、対象となった期間は厚生年金の加入期間としてカウントされません。
脱退一時金や老齢厚生年金の手続きは労働者側でおこないます。
雇用者が何か手続きを行う必要はありません。
【◉外国人の厚生年金についてもっとくわしく知りたい方はこちら!】
外国人労働者は厚生年金を納めないといけないの?二重払いを防ぐための社会保障協定とは?
外国人の社会保険について理解できましたか?
外国人の労働者であっても、基本的には社会保険への加入が必要です。
日本人の労働者と同様に、しかるべ手続きをもって契約しましょう。
ただしどこの国から来た人かによって加入条件や対応が変わるので、注意してください。
社会保障協定が結ばれている国なのか、そうでないのか。
また協定が結ばれている国であれば、どんな協定内容になっているかを確認することが大切です。
社会保険への加入・未加入に関しては法律で定められているため、雇用者や労働者の一存で決めることはできません。
行政にしっかりと確認して、必要な手続きをおこない、雇用者と労働者が信頼関係を持って安心して働ける環境を作りましょう!