外国人雇用のメリット・デメリットとは? 人手不足を乗り切るための基本ポイント
「求人を出しても若い日本人からの応募がほとんどない」「来てくれるのは60代が中心で、現場の高齢化が進んでしまう」
いま、多くの企業がこうした悩みを抱えています。とはいえ「外国人を雇うのは良さそうだけれど、手続きが大変そうで不安」「トラブルが起きないか心配」という気持ちもあるかもしれません。
ただ、少し視点を変えてみると、外国人雇用は単に人手不足を埋めるだけの方法ではありません。会社の仕組みを見直すきっかけになったり、組織全体の雰囲気を若くする効果が期待できます。
この記事では、初めて外国人採用を考える方に向けて、知っておきたいメリットや注意点、採用までの流れをできるだけ分かりやすく紹介します。
目次
そもそも外国人雇用とは? 日本人を雇用するのと何がちがうの?
ここ数年、日本で働く外国人は大きく増えています。
厚生労働省の発表によると、2024年10月末の時点で外国人労働者は約230万人に達しました。前年よりおよそ25万人も増えており、働いている事業所の数も34万か所まで広がっています。
いまでは「外国人を雇うのは特別な企業だけ」という時代ではありません。コンビニや飲食店、建設現場、IT企業など、私たちの日常の中に自然に存在しています。
参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
データで見る「外国人雇用」の現状

出典:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
結論を先に伝えると、日本人の働き手は減り続けている一方で、外国人は増え続けています。
最新の統計(令和6年)でも、その流れがはっきりと表れました。対前年で12.4%増えており、とくに人手不足が深刻な「医療・福祉」「建設業」「サービス業」などで大きく伸びています。
こうした状況の中で、競合となる企業はすでに外国人採用を進めています。いつまでも「日本人だけ」にこだわり続けると、採用の競争から後れを取ってしまうのが現状なのです。
「就労ビザ」と「雇用」の関係とは
外国人を雇うとき、よく耳にするのが「在留資格(就労ビザ)」という言葉です。
むずかしく感じやすい部分ですが、まずは大まかなイメージをつかんでおきましょう。
- 在留資格:日本でどんな目的で、どれくらいの期間、滞在できるかを決める許可
- 就労ビザ: 在留資格の中でも、働くことが認められているもの
たとえるなら、パスポートが「日本に入るための身分証」、就労ビザは「日本でできる仕事の種類が書かれた入場券」のようなものです。
日本人は基本的にどんな職種でも働けますが、外国人の場合は「許可された仕事の範囲」で働く必要があります。
関係性をまとめると、次のようになります。
| 人 | 仕事の自由度 | 例 |
| 日本人 | 制限なし | 正社員・パート・アルバイトなど |
| 就労ビザを持つ外国人 | ビザで認められた業務のみ | 「技術・人文知識・国際業務」ならオフィス系、「特定技能」なら決められた業種 |
| 留学生・家族滞在など | 原則アルバイトのみ(時間制限あり) | 飲食店・コンビニのアルバイトなど |
ビザの種類ごとの細かい違いは別の記事でまとめています。
ここでは「雇う前に、その人の在留資格でその仕事ができるか必ず確認する必要がある」という点だけ押さえておけば大丈夫です。
失敗しないために必要な4つの視点
外国人雇用のメリットやデメリットを考えるとき、意識したい視点が4つあります。
- 人材確保:人手不足を解消し、若い労働力を確保できるか
- 法令順守:在留資格や労働法をしっかり守れるか
- 職場環境:日本人と外国人のどちらにとっても働きやすい環境か
- 定着・育成:採用後も長く活躍してもらえる仕組みがあるか
それでは、まずは多くの企業が気になる「メリット」から見ていきましょう。
外国人雇用にはどんなメリットがある? 企業が得られる4つの効果

ここで伝えたいことは、外国人を雇うと「ただ人数が増えるだけではなく、会社そのものが強くなる可能性がある」という点です。
では、具体的にどんな良い変化が期待できるのか紹介していきます。
1. 若い労働力が入り、人手不足の解消につながる
いまの日本は有効求人倍率が高い状態が続いており、とくに若い人材を集めるのはとても難しい状況です。
一方で、日本に働きに来る外国人の多くは20代〜30代で、「日本でスキルを身につけたい」「もっと稼ぎたい」という強い意欲を持っています。
- 日本人採用:応募を待っても若手が集まりにくい
- 外国人採用:意欲の高い若手に出会えるチャンスが大きい
こうした前向きな気持ちを持つ人が職場に入ると、現場の空気が一気に明るくなる場合があります。
もちろん、教育に時間が必要だったり、コミュニケーションの工夫が求められたりする場面もあるでしょう。それでも、人手が足りずに仕事が回らない状況と比べれば、大きな助けになったと感じる企業が増えているようです。
2. インバウンド対応や海外展開で即戦力になる

飲食店や小売店では、英語や中国語が話せるスタッフがいるだけで、外国人観光客の対応がぐっとスムーズになります。
これは、接客業に限った話ではありません。製造業やIT企業でも、外国人ならではの視点が新しい商品づくりや海外進出のヒントになるといわれています。
たとえば、次のような例があります。
- アパレル店で、外国人スタッフが自国向けにSNS発信を行い、観光客の来店が増えたケース
- ホテルで、多言語対応ができるスタッフを配置し、口コミの評価が上がったケース
- 製造業で、海外代理店とのやり取りを外国人社員が担当し、商談が円滑になったケース
このように、語学力があるだけでなく、海外とのやり取りを安心して任せられる人材がいるとビジネスの幅が大きく広がることがあります。
3. 助成金を活用し、採用コストを適正化できる

「外国人を雇うとコストが高そう」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、実際は活用しやすい助成金があり、うまく利用すれば教育費や採用費を抑えられる可能性があります。
【外国人雇用で活用しやすい助成金の例】
| 助成金名 | どんな時に使える? | 金額イメージ(※要件による) |
| 人材開発支援助成金 | 日本語研修や職業訓練を行ったとき | 経費の30〜45%+賃金助成 |
| 働き方改革推進支援助成金 | 労務管理機器(翻訳機など)を導入するとき | 対象経費の3/4など |
| キャリアアップ助成金 | 生活支援や日本語教室を導入するとき | 1人あたり30万円〜 |
※制度は変更の可能性があるため、最新の情報は厚生労働省のHPや社労士に確認する必要があります
4. 社内が活性化し、マニュアルづくりが進む
外国人に仕事を教えるときに「見て覚えろ」というやり方は通用しません。そのため、「誰が見ても理解できるマニュアル」を用意する必要が出てきます。
意外かもしれませんが、この過程であいまいだった作業手順が整理され、日本人スタッフの教育もしやすくなるケースも多く見られます。
実際に企業へ聞くと、「外国人を受け入れたことで、日本人の若手も育てやすくなった」という声がよく聞かれます。
【重要】メリットは「裏側のリスク」と比較する
ここまで4つのメリットを紹介しましたが、どんな取り組みにも課題はつきものです。
「良いところだけ話しているのでは?」と感じられないように、メリットの裏側で起きやすいリスクと、その対策もまとめておきます。
| メリット | 発生しがちなリスク | 解決策 |
| 若い労働力の確保 | 日本の商習慣を知らない | ・採用基準を「経験」より「素直さ」に寄せる ・入社直後にビジネスマナー研修を行う |
| インバウンド即戦力 | 文化・価値観のギャップ | ・日本でのルールを最初に明文化する ・お互いの文化を知る時間を作る |
| 助成金・コスト適正化 | 手続きが複雑で負担が大きい | ・自社で抱え込まない ・行政書士や申請サポートのある会社に相談する |
| マニュアル化・活性化 | 初期のコミュニケーションに手間がかかる | ・翻訳ツールを導入する ・日本人社員にも「教える力」を評価する制度をつくる |
どのメリットにも、必ず乗り越えるポイントがあります。しかし、表にある対策を事前に準備しておけば、リスクは回避することができます。
一方でどんなデメリットがある? トラブルを防ぐために知っておきたいこと
ここからは、社内で「外国人を本当に雇って大丈夫なのか」と不安の声が出たときに、きちんと説明できるよう、リスクとその備えを分かりやすく整理します。
1. 手続きが複雑で、コンプライアンスへの注意が必要

外国人を雇う場合、日本人を採用するときより確認すべきルールや書類が多くなります。
とくに次の手続きは法律で決まっているため、必ず対応しなければなりません。
- 就労できる在留資格かどうかを事前に確認する
- 在留カードの期限を管理し、更新が必要な場合は早めに動く
- 雇用後に「外国人雇用状況届出書」をハローワークへ提出する
- 社会保険や雇用保険の加入手続きを正しく進める
とはいえ、「全部を自社だけでこなさないといけない」と思う必要はありません。
実際には、次のような対策をとる企業が多いようです。
- 在留資格を確認するためのチェックリストをつくる
- 在留カードの期限をシステムやエクセルで一元管理する
- 行政書士や社労士に、複雑な部分を相談する
- 登録支援機関など外部サービスに業務の一部を任せる
大切なのは、特定の担当者だけに任せず「仕組みとして管理すること」です。
ルールや手順を社内で共有しておけば、コンプライアンスの不安はかなり小さくなるでしょう。
2. コミュニケーションや文化の違いがトラブルにつながることがある
「日本人なら言わなくても伝わる」と感じることが、外国人には理解しにくい場合があります。多くの行き違いは、悪意ではなく文化の違いから生まれるものです。
- 時間の感覚(5分の遅刻をどう受け取るか)
- 上司への接し方や意見の伝え方
- 「担当外でも察して動く」ことが当たり前とされる日本独特の風土
しかし、こうしたミスマッチの多くは「最初に言葉で伝えていなかった」ことが原因だといわれています。
そこで効果的なのは、次のような取り組みです。
- 入社時に、社内ルールや仕事の進め方を説明する研修を行う
- 暗黙の了解に頼らず、紙やマニュアルで具体的に見える形にする
- 「わからないことはいつでも聞いていい」と伝え、相談しやすい雰囲気をつくる
日本人同士なら感覚で済んでいた部分を、少し丁寧に言葉にするだけで、トラブルは減っていきます。
3. 日本語レベルのミスマッチが生まれることがある
「N1(日本語検定の最上級)」だからといって、現場の専門用語を理解しているとは限りません。逆に、N3のレベルでも明るくコミュニケーションが取れれば、接客で力を発揮するケースもあります。
つまり、資格だけで判断しないことがとても重要です。
たとえば、仕事によって確認したいポイントは次のように変わります。
- 製造現場:安全に関する指示を理解し、正しく動けるか
- 介護:利用者さんとの会話や記録がどこまでできるか
- 事務職:メールやチャット、資料作成をどれくらいこなせるか
このように「仕事ごとに必要な日本語力を明確にする」ことが大切になります。そして、面接の段階でその基準を確かめておくことが欠かせません。
外国人雇用はあなたの会社に向いている? かんたん自己診断チェック

「メリットは分かったけれど、うちの会社でも本当にうまくいくのかな?」
そんな不安がある方は、まず次のチェックリストを見てみてください。
【自己診断】外国人雇用に向いている会社・向いていない会社
以下の項目について「はい/いいえ」で考えてみましょう。「はい」が多いほど、外国人雇用と相性が良い傾向があります。
- □ 仕事の手順がある程度決まっている(または決めることができる)
- □ 現場に「外国人に教えてあげよう」と思えるメンターを置ける
- □ 「見て覚えろ」ではなく、言葉や図で説明しようとする気持ちがある
- □ 多言語対応や海外向けの仕事が、今後増える可能性がある
- □ 日本語以外のツール(写真・動画・翻訳アプリなど)も活用してよいと思える
- □ 社長や現場責任者が、異文化に対して前向きである
ただ、「あまりチェックがつかなかったから無理だ」と思う必要はありません。たとえば次のように、あとから整えられる部分もたくさんあります。
- マニュアルがない →これを機に作れば、日本人スタッフの教育にも役立つ
- 教える余裕がない →助成金を使って教育時間を確保する方法がある
- 多言語対応の予定がない →まずは日本語がある程度できる人から始める
このように、会社の状況に合わせて少しずつ準備していくことが可能です。
最初の1人を採用する前に「受け入れ体制」を整えよう
最初に採用する外国人は、会社にとっても本人にとっても不安が大きいものです。
この時期をしっかり支えられるかどうかで、その後の成功が大きく変わっていきます。
とくに大切なのは、孤立させないことです。
仕事の相談だけでなく、日常生活で困りやすいこと、たとえばゴミの出し方や病院への行き方なども気軽に聞ける担当者を1人決めておくと安心です。
こうしたサポートがあるだけで、離職につながる不安を大きく減らせます。
採用から入社まで何をする? 5つのステップで分かるロードマップ

最後に、実際に外国人を採用するときの流れをイメージしてみましょう。期間としては、募集から入社までおよそ1か月から3か月ほど見ておくと安心です。
STEP1 受け入れ計画を立てる(業務内容・待遇)
まず最初に「どんな仕事を任せるのか」をはっきりさせます。
ここで注意したいのは、給与は日本人と同じか、それ以上に設定する必要があることです。安く雇えるという考えは持たないようにしましょう。
また、単純作業だけをお願いするのではなく、将来的に期待したい役割も考えておくと育成の方向性がぶれにくくなります。
たとえば「リーダー候補として育てたい」「海外部門の担当を任せたい」など、少し先の姿をイメージしておくとよいでしょう。
STEP2 募集と面接を行う
受け入れ方針を決めたら、どのチャネルで募集するかを選びます。一般的には、次のような方法がよく使われています。
- 外国人向け求人サイト(ガイダブルジョブス など)
- 人材紹介会社
- SNSや自社ホームページ
- 大学や日本語学校との連携
面接では、履歴書や資格だけで判断しないことが大切です。次のポイントにも注目してみてください。
- 実際に任せる業務を説明したときの理解度
- 日本語でのコミュニケーションの様子、素直さや意欲
- 日本で働きたい期間や、将来の希望
- 職場を見てもらったときの反応にギャップがないか
もし可能であれば、現場スタッフと少し話す時間を作ると、お互いに働くイメージを共有しやすくなります。
STEP3 在留資格(ビザ)の申請を進める
採用が決まったら、在留資格の申請や変更を行います。ここが一番複雑な工程で、行政書士に依頼する企業が多い印象です。
審査には3か月以上かかることもあるため、余裕を持ったスケジュールが欠かせません。
STEP4 入社に向けた準備を進める(住まい・生活インフラ)
働き始める前の生活面のサポートも、とても大切な要素です。たとえば、次のような支援があります。
- 住まい探しや不動産会社の紹介
- 住民登録や健康保険、年金などの手続き案内
- 銀行口座や携帯電話の契約のサポート
- 地域の日本語教室や相談窓口の情報共有
中小企業では、すべてを自社だけで行う必要はありません。自治体の国際交流協会やNPOと連携し、一部を任せるケースもよく見られます。
STEP5 入社後のオンボーディング
入社してからの最初の3か月は、とくに重要な期間です。
定期的に面談を行い、「困っていることはない?」と声をかけてみてください。この時期の不安が解消されると、安心して働き続けやすくなります。
初期のサポートがしっかりしていれば、長く活躍してくれる心強い存在へと育っていくでしょう。
より詳しい採用ステップは、以下の記事でも紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
さいごに
ここまで読んで、「やっぱり準備が大変そうだな」と感じた方もいるかもしれません。たしかに、日本人を採用するときより手間が増える部分はあります。
それでも、その準備の先には「人手不足から抜け出せること」や「会社がもう一段成長できること」といった大きな成果が期待できます。だからこそ、焦らず、少しずつ進めていくことが大切です。
ガイダブルジョブスでは「ビザの仕組みがよく分からない」「まずはどんな人材がいるのか知りたい」といった段階からでも、専任スタッフが御社の状況に合わせて丁寧にサポートしています。
一人で抱え込まずに、ぜひお気軽にご相談ください。
「自社に本当に合う外国人は採用できるの?」と悩んでいませんか?
外国人雇用の良さをしっかり生かすには、すでに成功した企業がどんな取り組みをしているのか知ることが、とても大きなヒントになります。
そんなときに役立つのが、ガイダブルジョブスが作成した導入事例集です。
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