令和5年10月末の時点では、外国人労働者の数が約204万人(前年比22万5千人増)となり過去最高を更新しました。
日本の少子高齢化による労働不足、そして企業のグローバル化対応、日本だけではなく海外のマーケットを開拓するという目的でも、外国人を雇う企業は増加しています。

今回の記事の中では、日本国内で働く外国人労働者の現状と、外国人を雇用するメリットなどについて解説いたします。

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外国人労働者・在留資格の現状

日本で居住しながら、長期間の滞在をしている外国人は、どのくらいいるかご存知でしょうか? 法務省が調べたところによれば、令和5年度末における中長期在留者数は約312.9万人、特別永住者数は約28.1万人です。これらを合計すると、在留外国人の数は約341万人になります

前年度と比較すると33万5千人増加しており、増加の割合でいえば11%近い数値になります。そしてこの在留している外国人のうちで、約204万人が日本で働いているといいます。

日本で働く外国人、多い在留資格は?

そもそも「外国人労働者」とは、外国の国籍を持ちながら日本で仕事に就いている外国人のことを指します。近年は多くの外国人労働者がいるため、彼らの就労形態もさまざまなものがあります。

中でも令和5年末時点でもっとも多い在留資格が「永住者」で、日本国内には約89.1万人います。

活動に制限がない在留資格

  • 「永住者」
  • 「定住者」
  • 「日本人の配偶者等」
  • 「永住者の配偶者等」

上記の在留資格を持っている方は、在留中の活動に制限がとくにありません。そのため彼らは外国人ではありますが、さまざまな業界で自由に仕事ができます。

そしてつぎに多いのが「技能実習」で約35.8万人います
前年から引き続き3.3万人以上増えており、今後は新たな制度である「育成就労」へと移行していくことが決まっています。そもそも技能実習は途上国への最新技術の移転を目的として創設されたものですが、ここ10年では本来の実態とかけ離れていたため、他国から見ても問題視されていたことがこの変化の背景にはあります。

このつぎに多いのが「技術・人文知識・国際業務」で約34.6万人。「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれるこの在留資格を持つ方も増えており、前年比では3.4万人増加しています。

「留学」も前年から5千人ほど増えています。ちなみに「留学」は留学生のアルバイト就労も対象で、本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内(※1週28時間以内)で、相当であると認められる場合に報酬を受ける活動ができます。

【最新情報】新制度「育成就労」について|技能実習制度との違い、何が変わるのか、今後の動きを詳しく解説

参考:出入国在留管理庁  「令和5年6月末現在における在留外国人数について

在留資格「特定技能」について

外国人労働者が増えている背景として、2019年に新設された「特定技能」の存在があります。

日本では多くの業界で高齢化が進み、55歳以上の人が占める割合は、農業では60%程度、建設でも45%と非常に多いです。

高齢化が進む日本の業界

特定技能ビザが生まれた背景は、国内のリソースだけでは労働力が確保できないため、人材不足が深刻とされている特定業種で、外国人雇用ができるようにするためです。

特定技能には「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類があります。

特定技能1号

特定技能1号では、特定の産業分野で一定の知識と経験があれば、とくに特別な教育などはいりません。特定の産業で、すぐに働いてくれる外国人の方に向けた在留資格であるといえます。

技能における能力や、日本語能力は試験などで確認されます。
この在留資格の問題点としては「家族の帯同が基本的には認められていないところ」があげられるでしょう。

特定技能2号

特定の産業分野において、熟練した知識や経験を持っている外国人に向けた資格です。
知識や経験を生かして、より活躍が見込める外国人に与えられます。

2号では日本語能力の確認は不要。用件を満たしている場合には、家族の帯同も認められます。

▼詳しくはこちらもご確認ください

特定技能1号と2号は何がちがう? 就業できる業種や取得要件の違い、1号から2号への移行について

 

日本で働く外国人労働者が抱える問題点

言語の壁

多くの外国人労働者が日本語に不慣れであり、職場での指示や業務内容の理解に苦労することがあげられます。また日常生活や役所での手続きでも、言語の壁が大きな障害となります。

労働環境

外国人労働者は、長時間労働や低賃金に苦しむケースが報告されています。これは日本人労働者に比べて、労働条件が厳しいことが多いためです。建設業、農業などの現場では、過酷な労働環境が問題となり、肉体的・精神的負担が大きいことも多いといわれています。

生活環境

外国人労働者が賃貸住宅を借りる際に、言語や文化の違いから物件を見つけるのが困難であったり、保証人が必要であったりすることが多いです。ときには劣悪な住環境に住まざるを得ない場合もあります。また同僚や近隣住民との交流が少ないため、支援が得られにくい状況もみられます。

外国人はこのような社会的孤立感に悩まされないためにも、特定の地域に集まって暮らす傾向が見られることがあります。都内であれば、以下のような場所がよく知られています。

〈新宿区・大久保エリア〉

この地区は韓国人や中国人のコミュニティが多いことで知られています。
韓国料理店やアジア系スーパーなどが立ちならび、同郷のひとびととつながりやすい環境が整っています。

〈台東区・浅草エリア〉

浅草や上野周辺には、中国人を中心とした外国人が多く住んでいます。観光地であることからも、外国人の労働者や留学生がこのエリアに集中しやすい傾向があります。

〈江戸川区エリア〉

このエリアにはインド人コミュニティが増加しており、特にインド料理店やインド人向けの食材店が多くあります。西葛西は「リトル・インディア」と呼ばれ、日本に住む在留インド人の1割以上が住んでいるという話もあります。

法的・制度的問題

技能実習、特定技能の在留資格は、就業可能な業種が限定されており、転職や住環境の変更が制限されるので、働く環境にもし不満があっても改善が難しいことがあります。

技能実習から育成就労制度へと変わることで、この点の問題が解決されると考えられていますが、実際には変更してみないことにはまだわからないでしょう。

健康・福祉

言語の壁や保険制度への理解不足から、適切な医療サービスを受けることが難しいことがあります。とくに精神的な健康の問題などでは、支援が不足していることが多いようです。

外国人労働者を雇うことのメリットは?

働いている外国人

製造業、配送業、清掃業など、多くの業界ですでに多くの外国人が働いています。人口減少を迎えている日本で、積極的に外国人労働者を迎え入れることに、どんなメリットがあるのか、見ていきましょう。

メリット1. 労働力不足の解消

人口減少への対策: 日本では少子高齢化にともなって、労働力不足が深刻になっています。とくに製造業や農業、介護などの分野では若い世代の労働者が減少しているため、外国人労働者を採用することで、これらの分野における人手不足を補うことができます。

即戦力としての活用: 特定技能などの在留資格を持つ外国人労働者は、特定の技能や経験を持っているため、短期間で即戦力として活躍することが期待されます。

メリット2. 多様な視点と文化の導入

イノベーションの促進: 外国人労働者が持つ異なる文化的背景や視点は、企業にとって新しいアイデアや解決策を生む源となり得ます。多様性のあるチームは、製品開発や業務改善においても、創造的なアプローチが期待できます。

グローバル市場への対応: 外国人労働者が企業に加わることで、企業が海外市場に進出する際に、言語や文化の壁を乗り越えるための知識やスキルを活用できます。とくに製造業においては、海外の顧客とのコミュニケーションや現地のニーズに合わせた製品開発がしやすくなります。

実際に具体的な例として、アメリカ企業ならGoogleの多国籍なチームが挙げられます。

メリット3. 地域経済への貢献

地方の活性化: 農業や介護の分野では、地方での労働力不足がとくに深刻です。外国人労働者がこれらの地域に住み働くことで、地域経済が潤うことや人口減少対策に寄与します。また外国人労働者が定住することで、地域の文化交流やコミュニティ形成にもプラスが多いです。

産業の持続可能性: 農業や製造業などの基幹産業において外国人労働者を取り入れることで、産業の持続可能性がより高まります。これによって、地域産業の競争力が維持され、地方経済全体が安定するのです。

メリット4:コストの最適化

労働コストの抑制: 日本人労働者が不足する一方で、外国人労働者を雇用することで、労働コストを最適化することができます。この点はとくに中小企業にとって重要な要素であり、コスト効率を高めることで競争力を維持・強化できます。

メリット5. 人材育成の可能性

技能移転と国際交流: 外国人労働者の受け入れを通じて、企業内での技能移転が進むとともに、国際的な交流が深まります。これによって外国人労働者が、日本の技術やノウハウを学び、逆に日本人労働者も国際的な視点やスキルを身につけるケースが増えます。

メリット6. 企業のCSR(企業の社会的責任)向上

社会的包摂の実現: 外国人労働者を積極的に雇用し、適切な労働環境や教育の機会を提供することで、企業のCSR活動の一環として、社会的包摂を推進することができます。CSRが向上すれば、企業の社会的な評価が向上し、ブランドイメージの強化にもつながります。

メリット7. 対応力の強化

柔軟な労働力対応: 季節労働や繁忙期に応じた柔軟な労働力を確保するために、外国人労働者が効果的です。とくに農業、製造業では繁忙期に一時的に労働力を確保することがもとめられますが、外国人労働者に協力してもらうことで、この需要に対応することが可能です。

まとめ

外国人の在留資格の現状、労働者が抱えている問題点、外国人を雇うメリットなどについて、詳しく紹介してきました。日本人の人口が減少していく中、外国から多くの方が日本で働き始めています。

上記のようなメリットや、問題点を理解して、外国人採用をぜひ検討してみてください。

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