非居住者の所得税について知っておきたいこと! ワーキングホリデー(ワーホリ)の場合にはどう考える?
日本に居住して所得を得ていれば、当然ながら所得税が課されます。
では日本で働く外国人の方は、どのように所得税が課せられるのでしょうか?
この記事では非居住者の所得税の扱い、またワーキングホリデーの場合はどうなるかについても解説していきます。
目次
非居住者の所得税について
日本の労働力不足を背景として、近年は外国人労働者の採用が増えています。
しかし言葉の壁もあり、外国人労働者にとって異国の地で慣れない生活を送るのは大変なものです。
外国人労働者の負担にならないように、所得税納付についてはできるだけサポートしてあげられるといいでしょう!
所得税とは?
非居住者の所得税を考える上で、まずは所得税の概念を知っておきましょう。
所得税については、「所得税法」で詳しく規定されております。
所得の種類は、10種類にわけることができます。
所得 | 内容 | |
1 | 利子所得 | 公社債(※借用証書のこと)や預貯金の利子、貸付信託や公社債投信の収益の分配から生じる所得 |
2 | 配当所得 | 株式の配当、証券投資信託の収益の分配、出資の剰余金の分配などから生じる所得 |
3 | 不動産所得 | 不動産、土地の上に存する権利、船舶、航空機の貸付けなどから生じる所得 |
4 | 事業所得 | 商工農業、漁業、自由業など、事業から生じる所得 |
5 | 給与所得 | 給与、賞与などの所得 |
6 | 退職所得 | 退職で得た所得 |
7 | 山林所得 | 5年を超えて所有していた山林を伐採して売ったり、または立木のまま売った際の所得 |
8 | 譲渡所得 | 事業用の固定資産、家庭用の資産などを売った所得 |
9 | 一時所得 | クイズの賞金、満期保険金などの所得 |
10 | 雑所得 | 年金や恩給などの公的年金など、非営業用貸金の利子、原稿料や印税、講演料などの、ほかの9種の所得に属さない所得 |
会社員ならとくに給与所得に、フリーランスや個人事業主の方なら事業所得になじみがあるのではないでしょうか?
所得税は、原則その年の所得に対して確定申告をして納付することが必要となります。
しかしながら給与所得がある方の大部分は、年末調整で所得税が精算されるので確定申告は不要です。
非居住者とは? 居住者とのちがいは?
まず、「非居住者」とはどんな方を指すのでしょうか?
日本の所得税法では、「居住者」は以下のように規定されています。
”「居住者」とは、日本に「住所」を有し、または現在まで引き続き一年以上「居所」を有する個人。「住居」は「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになる。”
日本在住の方の多くは、日本に住所を有しているため「居住者」に該当します。
「非居住者」はこの居住者以外の個人がすべて該当します。
日本での滞在が一年未満で住所も有していなければ、非居住者として扱われることになるでしょう。
居住者の所得税について
居住者についてはさらに「非永住者」と「非永住者以外の居住者」に分類することができ、両者で所得税納付に違いがあります。
1)非永住者
非永住者とは居住者のうちで日本国籍がなく、過去10年以内で日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人のことです。
そのため日本に比較的長く居住する外国人でも、非永住者に該当することも多く、日本人と所得税の扱いが異なることがあります。
非永住者は、所得税法に規定する国外で生じた所得(国外源泉所得)以外の所得と、国外源泉所得で日本国内において支払われ、または日本国内に送金されたものに対して課税されます。
非永住者の場合には「国外で発生して、国外で支払われた所得については所得税に該当しない」と理解するといいでしょう。
2)非永住者以外の居住者
「非永住者以外の居住者」は、上記の該当者以外の居住者で、大半の方がここに該当します。
「非永住者以外の居住者」であれば、所得が発生した場所が日本でも海外でも、すべての所得に所得税が課されます。
非居住者の所得税について
「非居住者」は日本国内で生じた所得に対して課税されます(国内源泉所得)。
つまり外国人労働者の方が日本国内に住所を有していなくても、日本で働いたことに起因する収入であれば所得税は課されます。
もし源泉所得されないで給与が支払われた場合、非居住者である外国人労働者の方が確定申告で所得税を支払わなくてはなりません。
一方で国内に住所を有していないため、住民税は非課税となります。
また、日本は諸外国と租税条約を締結しています。
中には免税についての規約が明記されており、一定の条件を満たすことで短期滞在者が免税される場合もあります。
ワーキングホリデーは非居住者? 所得税はどうなるの?
休暇目的の入国で滞在しているあいだの資金を補うために、付従的に就労を認める制度を「ワーキングホリデー(ワーホリ)」といいます。
この制度を利用して、20代で海外へ行かれた方もいるのではないでしょうか?
日本は26カ国(※2023年現在)の国・地域とのあいだでこの制度を導入しており、もちろん外国人もこの制度を利用して日本に滞在できます。
すでに日本でワーキングホリデービザを取得する外国人の数は、年間1万5千人に達しています。
多くの外国人が日本を訪れているため、彼らを自社の貴重な労働力として雇う機会も増えるでしょう。
ましてワーキングホリデーで日本に来ている外国人は滞在資金が必要です。
彼らは日本で短期間働くことに対して、非常に意欲的であるといえるでしょう。
ただ、ワーキングホリデービザを取得して来日した人を雇用する場合、彼らが「非居住者」に該当するかは気になるところです。
また、彼らの所得税はどうなるのでしょうか?
ワーキングホリデーの場合の所得税は?
所得税を判断するにあたって、まずワーキングホリデーの方がどこに該当するかを判断しましょう。
ワーキングホリデーで来日した外国人は、最大一年間(※入国日から一年間)日本に滞在できます。
「居住者」と「非居住者」の違いで解説したように、日本に住所を有していなくても、一年以上日本に居所があれば居住者に該当します。
ワーキングホリデーだと、最大でも一年の滞在ですので、多くの場合は非居住者に該当します。
非居住者に該当するワーキングホリデーの方には、給与支払い時に原則20.42%(復興特別所得税含む)の源泉徴収をすることで完結します。
一年まるまる滞在する場合は、居住者の非永住者に該当し、日本人と同様に税額表に乗じた税率を算出する必要があります。
ほかに一年未満で就労可能な在留資格は?
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」であれば、日本国内でどのような職業でも就労が可能です。
しかしこの条件に絞ると、採用できる外国人の人数も少し減ってしまいます。
そこで近年話題になっているのが特定技能制度です。
この制度には「特定技能1号」と「特定技能2号」があり、それぞれ試験のレベルが異なります。
特定技能1号を有する外国人の滞在期間は、1年、6か月又は4か月ごとの更新が可能で、最長で5年間滞在することが可能です。
ただし家族の帯同は認められていません。
一方で特定技能2号だと、3年、1年又は6か月ごとの更新があり、滞在期間に制限はありません。
また家族の帯同も認められています。
特定技能の場合も所得税に対する考え方は同じで、最初の一年間は非居住者として20.42%源泉徴収されてから給与支払いされます。
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この点に注意しましょう!
「住所」は生活を日本で営んでいることが原則ですが、ビザの種類だけではわかりません。
判断がつかない場合は、税務署に問い合わせましょう。
非居住者の所得税について理解できましたか?
以上、非居住者の所得税や、ワーキングホリデーで滞在している方の所得税について解説してきました。
慣れるまでは少しだけややこしい部分があるかもしれません。
しかし、まずは非永住者以外の居住者、非永住者の居住者、非居住者のどこに該当するかを考えてみましょう。
今後、日本では労働者不足の問題から、外国人労働者の採用が会社にとっても重要になります。
今回の非居住者の所得税の記事を参考にし、ぜひ外国人労働者の採用に役立ててください。