近年、国内では急速に国際化が進み、国際語である英語を筆頭として外国語に対応できる能力がますます求められる傾向にあります。

全国の小中学校や高等学校でも英語教育の強化が実施されており、ALT(外国人英語指導助手)を採用するところが増加しています。そもそもALT(外国人英語指導助手)とは、いったいどんな役割を果たしているのでしょうか?

今回は教育機関や企業における、ALT(外国語指導助手)の採用について解説していきます。

ALT(外国語指導助手)とは?

まず最初にALT(外国語指導助手)の概要についてご紹介いたします。

ALTとは、Assistant Language Teacherを略したもので、日本の公立小学校、中学校、高等学校などで外国語教育をサポートするために雇用されている、外国人の英語教師の頃です。おもな役割としては、英語の授業で日本人の英語教師(JTE:Japanese Teacher of English)をサポートして、生徒に英語の発音や文化を教えます。

海外滞在経験がない日本人英語教師の教育では限界があることから、ALTは各自治体の教育委員会によって開始されるようになりました。

ALTの特徴と役割

授業サポート
・・・ 日本人の英語教師といっしょに授業を行い、リスニング、スピーキング、発音の指導を担当します。文法やテストの指導は通常なら日本人教師が担当しますが、ALTは実践的な会話やコミュニケーションのサポートに重点を置いています。

異文化理解の促進
・・・ 英語を教えるだけでなく、自分の出身国や文化について紹介、また日本文化との相違点を説明することで、生徒が自国以外の文化にふれる機会を提供します。

教育材料の提供
・・・ 授業で使う教材やアクティビティのアイデアを出して、英語を楽しく学べる環境をつくることを手伝います。

【小学校の英語授業におけるALT使用率(経年変化)】

このグラフが示す通り、日本の小学校の英語授業においては、ALT活用が進んでいます。

引用:文部科学省(英語教育実施状況調査)

【国内の小中・高等学校(公立)におけるALT途用数】

【国内の小中・高等学校(公立)におけるALT途用数】

引用:文部科学省(英語教育実施状況調査)

また企業においても、訪日外国人の増加にともなって、インバウンド対策としての外国人雇用が進んでいます。さらに国内の企業が海外で事業を推進するにあたって、社内での外国語教育も目的とした外国人雇用が行われています。

【企業における外国人労働者の比率】

こちらは2005年から2023年までの日本の外国人労働者数(棒グラフ)と、総労働力に占める外国人労働者の割合(折れ線グラフ)を示したグラフです。このビジュアルは外国人労働者数と労働者全体に占める外国人労働者の割合の両方が、時間の経過とともに着実に増加していることを示しています。

日本では200万人以上の外国人の就業者がいますが、この数は日本人就業者の3.5%近い数値になっています。

ALTニーズの高まりについて

Teach

ALTは英語だけに限らず、さまざまな国の言語をより正確に、かつ生活に密着した方法で教えてくれる点で注目されています。
ALTからは教科書では学べない、「実際に使える外国語」を学べることが期待されているのです。

日本では英語が義務教育となっており、高等教育課程を含めるとほとんどの人が約6年間は英語を勉強しています。
しかし果たして、そのうちの何人が実際に英語を使いこなしているか疑問視されているのが現状です。

少子高齢化、人口減少を迎える日本において、国際化への道を切り開くことはいまや国の将来を左右する課題です。日本の国際化に向けて、「ALTによるリアルな外国語教育へのニーズ」は企業のあいだでも求められています。

ALTの仕組み

ALTは各都道府県、市町村などの自治体にて、登録者を募り紹介する仕組みになっており、「JETプログラム」とも呼ばれています。最近では民間企業を対象にした、ALTの派遣業者・紹介業者なども増加しています。

ALTとして働くためには、一般的に以下のような条件がもとめられます。中には必須ではないものもありますが、採用においては考慮されます。

項目内容
学歴:大学の学位ALTとして働くには、基本的に4年制大学を卒業して学士号を持っていることが必要です。これはビザ取得の条件でもあります。
英語ネイティブスピーカー英語を母語とする国の出身であることがALTにもとめられることが多いです。具体的にはアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、南アフリカなどの国が該当します。ただし英語を流暢に話すことができれば、非ネイティブスピーカーでも雇用されることはあります。
日本語能力(必須ではない)日本語能力は必須ではありませんが、日常生活や学校でのコミュニケーションに役立つため、ある程度の日本語スキルがあると歓迎されます。
年齢制限(必須ではない)JETプログラムには年齢制限は明確には設けられていませんが、一般的にALTとして働く人々は20代から30代が多い傾向にあります。年齢に関しての具体的な条件はありませんが、若い世代が多く採用される傾向があります

在留資格

ALTの在留資格に関しては、大きく2つのタイプがあります。

  • 本人がもともと在留資格を有しているケース
  • 採用を機に在留資格を申請するケース

もともと留学や就職を目的に、就労ビザなどの在留資格を有しているALTもあれば、採用をきっかけに採用側の支援を得て在留資格(多くは技術・人文・国際ビザ)を取得するALTもあります。

ALTの報酬はどれくらい?

お金

ALTの報酬の相場はどれくらいなのでしょうか?

ALTは先述したように、とくに資格を必要としない専門職です。しかしながらそれぞれのALTによって、能力やスキルが異なっています。たとえば「4か国語に対応できるALT」、「日本語学科を卒業しているALT」、「専門技術や資格を有するALT」など、キャリアや能力もさまざまです。

採用するALTのレベルや雇用形態によって報酬も異なるため、一概にはいえませんが、概ねのところ月給で換算した場合の平均は25万~30万円程度が相場であることが多いようです。

ALTを雇用するには?

大手企業を筆頭に、国内では国際市場での競争力を高めるべく、以前から社内での英語・外国語教育へ取り組みが実施されてきました。
グローバル人材の育成や外国人雇用は、経済的に余裕のある大企業を中心に行なっていました。しかし2000年代に入ってからは、中小企業においてもかなり外国人の雇用が積極的に進んでいます。

企業がALTを雇用する方法は?

ALTを雇用する方法は大きく3つの方法があります。

  1. JETプログラムを活用する(各自治体を介して雇用する)
  2. 民間請負・派遣業者などの民間事業者を活用する
  3. 自社でALTを募集し、直接雇用する

それぞれの雇用方法の特徴を解説します。

JETプログラムを活用

JETプログラムを活用することで、条件に合ったALTを探すことができます。JETプログラムでは、海外または国内に滞在中の多数のALTが登録されていますので、それぞれ企業の所在地が属する自治体に問い合わせることができます。

自治体によって、ALTと各企業のマッチングイベントなどが開催されている場合もあります。雇用形態は派遣、業務委託、臨時採用などと多様な方法があり、直接雇用を前提にすることも可能です。

民間事業者を活用する

民間でもALTを取りあつかう事業者が増えています。派遣・人材紹介、業務委託、直接雇用を前提にした人材派遣などで、条件に合ったALTの雇用が可能です。

民間事業者はそれぞれ独自の条件のもとにALTの募集を行っています。すでにJETプログラムに登録済の方もいれば、JETプロブラムには登録されていない方を探すこともできるのです。選択肢が拡がり、人材のプロに任せることで、ミスマッチングのリスクも低くなります。

自社でALTを直接雇用する

自社でALTを直接雇用する方法は、外国人向けの求人媒体や、サイトにてALTの募集を行って希望に合った方を探します。直接雇用の場合でも業務委託や臨時採用、勤務時間数を限定した雇用、あるいは正社員としての雇用ができます。

自社で掲載する求人媒体を探すことから始まり、応募者への対応、面談、採用までを行います

直接雇用のメリットは?

JETプログラムを活用した場合でも、民間事業者を活用した場合でも、直接雇用へと切り替えることが可能です。
また、最初から直接雇用を検討することも選択肢のひとつでしょう。

ここでALTを直接雇用することのメリットについて、ご紹介いたします。

1.コスト削減

会社がALTを直接雇用することで、派遣会社を通じた雇用にかかる手数料や中間マージンを削減できます。これにより、コスト効率が向上し、ALTに対して適切な給与を支払いながらも総経費を抑えることが可能です。

2.ALTの長期的な貢献

直接雇用することでALTとの長期的な関係を築きやすくなります。派遣契約は一定期間で終了することが多いですが、直接雇用では契約期間を柔軟に設定できるため、優秀なALTが長く在籍する可能性が高まります。これにより、教育やトレーニングの一貫性が確保され、ALTが会社の文化に深くなじむことが期待されます。

3.柔軟な業務指示

直接雇用することで、ALTに対して柔軟な業務指示が可能です。学校や企業内のニーズに応じて、教育以外の業務や特定のプロジェクトに関わるよう調整できます。ALTの能力や経験を活かし、教育以外にも会社の国際化や異文化交流活動を推進する役割を担わせることができます。

4.ALTへのサポートの強化

直接雇用することでALTに対して、より手厚いサポートを提供できます。住宅の手配や生活面での支援、職務に関するトレーニングなど、派遣会社を介さずに自社で対応することで、ALTの満足度を向上させて、離職率を低減させることができます。

5.会社のニーズに合ったALTの採用

直接雇用では会社のニーズに合わせた、スキルや経験を持つALTを自由に採用できます。とくに特定の分野(ビジネス英語や特定の教育手法など)に精通したALTや、異文化コミュニケーションにすぐれた人材を選びやすくなります。

6.ALTのモチベーション向上

直接に雇用することでALTに対して明確なキャリアパスを提供できます。ALTとして働くだけでなく、将来的には教育プログラムの開発や企業内での異文化対応プロジェクトに参加するなど、より多様な業務に従事する機会を与えることができます。これによってALTのモチベーションが向上し、仕事に対するコミットメントも生まれます。

終わりに|ALTの採用について

日本は人口比としても若い世代は少なっていますが、外国人労働者が増えてすこしずつ国際化が進んでいます。日本企業は外国人に高い日本語力をもとめますが、同時に日本人も英語力を高めていく必要があるのは明らかでしょう。

今後は日本企業が今以上のさらなる成長を見込み、売り上げを上げていくには、海外進出していくことが必要ですそのためにも、ALTの雇用を進めていくことが大切です。