【行政書士監修】就労ビザ申請の流れ|海外から招へいする場合、日本在住の外国人を採用する場合の2通りに分けて解説!
近年、多くの業界で労働力が不足しており、外国人を雇うことが多くの企業にとって一般的になっています。
しかし、実際に外国人を雇う際には、就労ビザの申請手続きなどで不安を感じる採用担当者も少なくありません。
そこで、今回は外国人の就労ビザ申請について、全体の流れや必要な書類をわかりやすく説明します。
目次
そもそも、就労ビザってなに?
「就労ビザ」とは、外国人が日本で働くために必要な在留資格のことです。
日本には16種類の就労ビザがあり、それぞれのビザは特定の活動内容に応じて細かく分類されています。
どのビザにも該当しない場合、日本で働くことは難しく、適切なビザを持つことが重要です。
また、一般的に「ビザ」というと入国時に必要な「査証」を指しますが、ここでいう「就労ビザ」は、就労を目的とした在留資格のことを指します。
つまり、本記事での「就労ビザ」は、実際に働くための在留資格を意味しています。
日本の就労ビザは以下の19種類あります。
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職(1号・2号)、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能(1号・2号)、技能実習(1号・2号・3号)
就労ビザ申請の基本的な流れは?
外国人を雇うには、「海外から外国人を呼びよせる」もしくは「すでに日本にいる外国人を採用する」の2つの方法があります。
この2つでは必要な書類が異なりますが、手続きの大まかな流れは同じです。
まずは、全体の流れを見てみましょう。
STEP1. 在留資格を確認する
まずは、外国人が日本でどんな仕事をするのかを確認し、仕事の内容に合った就労ビザの種類を選びます。
就労ビザには16種類があり、仕事に合ったものを選ばないと申請が通りません。間違えないよう、事前にしっかり確認することが大切です。
STEP2. 雇用契約を締結する
就労ビザを申請するには、雇用契約を結んでいる必要があります。
会社と外国人の間で契約を交わし、仕事の条件をはっきりさせます。この契約書はビザ申請のときに必要で、給与や働く時間がきちんと書かれていることが重要です。
STEP3. 出入国在留管理庁(入管)へ、就労ビザの申請をする
契約を結んだ後、企業の所在地を管轄している入国管理局に就労ビザを申請します。
おおくの場合、企業が手続きを手伝い、必要な書類をそろえて提出します。
必要な書類には、在留資格認定証明書申請書、契約書、会社の情報などがあり、審査には数週間から数か月かかることがあるため事前準備が重要になります。
STEP4. 申請が承認されたら、正式に雇用する
申請が承認されて在留資格認定証明書が発行されると、外国人は就労ビザを取得し、日本で働けるようになります。
このステップを終えてから、外国人を迎えて仕事を始めてもらいます。
「海外から外国人を呼びよせる場合」の就労ビザ申請の流れ
ここからは、就労ビザ申請の中でも「外国人を海外から招いて雇用する場合」の流れについて紹介します。
STEP1. 在留資格を「取得できる可能性」を確認する
まず、外国人が日本でおこなう予定の仕事に合った在留資格が取れるか確認します。
就労ビザはたくさんの種類があり、仕事の内容によって必要な資格が違います。
雇う会社は、その外国人の学歴や仕事の経験、持っている資格がその就労ビザの条件に合っているかを確認して、取得できる可能性を判断します。
これで申請が通りやすくなり、手続きもスムーズに進みます。必要であれば、入国管理局に問い合わせたり、専門家に相談するのも良いです。
STEP2. 「海外に在住している間に」雇用契約を締結する
在留資格が取れそうだと確認できたら、外国人がまだ海外にいるうちに雇用契約を結びます。
契約は、仕事の条件や給料、働く時間などをしっかり決めた内容にする必要があります。
この内容を記載した「雇用契約書」は、就労ビザを申請するときに必要になる書類です。
契約を結ぶことで、会社と外国人の両方が安心して申請の手続きを進められます。きちんとした契約書があれば、申請する時の信頼性も高くなります。
STEP3. 出入国在留管理庁へ「在留資格認定証明書交付申請」を提出する
雇用契約を結んだ後、企業の所在地を管轄している入国管理局に「在留資格認定証明書交付申請」を提出します。この申請は、おもに企業側が進めます。
必要な書類には、申請書や雇用契約書、会社の情報、外国人の履歴書や資格証明書などが含まれます。
外国人と一緒に作成するものもあるため、書類に間違いや不足がないかを確認することも大切です。
審査は数週間から数か月かかるので、時間に余裕を持って準備しましょう。
STEP4. 申請が承認されたら「日本に入国してから」正式に雇用する
日本に入国するまでの流れは少し複雑で、細かく分けると以下のような流れになります。
STEP4-1 出入国在留管理庁へ「在留資格認定証明書交付申請」を提出する
企業の所在地を管轄している入国管理局に「在留資格認定証明書」の発行を申請します。この申請は、おもに企業側が進めます。
この証明書は、日本に来る外国人の上陸許可が審査されたことを示す書類です。
有効期限は3か月で、外国人は期限内に日本へ入国する必要があるため入社3か月前になったら速やかに申請しましょう。
STEP4-2 「在留資格認定証明書」を海外に住む外国人に送る
証明書が交付されたら、それを海外に住んでいる外国人に国際郵便で送ります。その後は外国人が手続きを進めることになります。
外国人は来日前後にたくさんの準備が必要になるので、証明書を送った後も、忘れないように何度か確認するようにしましょう。
STEP4-3 外国人が自国の日本大使館や領事館でビザを申請する
外国人は「在留資格認定証明書」と必要な書類を持って、自国の日本大使館や領事館に行き、査証の申請をします。
STEP4-4 就労ビザが発行されて外国人が来日する
日本に上陸したら、空港で在留資格認定証明書や査証、旅券などを提出して在留カードを受け取ります。
このステップを終えると、外国人は入社して仕事ができるようになります。
「すでに日本にいる外国人を採用する場合」の就労ビザ申請の流れ
次に、日本にいる外国人を雇用する場合の手続きを紹介していきます。
STEP1. 在留資格が「仕事の内容に合っているか」を確認する
日本に住んでいる外国人を採用する前に、その人が持っている在留資格が働くポジションの業務内容に合っているかを確認します。
就労ビザにはいろいろな種類があり、それぞれできる仕事が決まっています。
外国人の在留資格が仕事に合っているか、または資格を変更する必要があるかを確認することで、採用後の手続きがスムーズにすすみます。
STEP2. 「雇用契約書を作成して」契約を締結する
在留資格を確認したら、次に雇用契約を結びます。
雇用契約書には、仕事の条件、給料、働く時間、勤務地などを詳しく書いておきます。
この契約書は、在留資格を変更する際や後々のトラブルを防ぐために必要な書類なので、しっかりとしたものを作成することが大切です。
契約を結ぶときは、会社と外国人の間で仕事に関する合意をしっかりと得ておきましょう。
(STEP3.)必要な場合は、出入国在留管理庁へ「在留資格変更許可申請」を提出する
もし現在持っている在留資格が仕事に合っていない場合や、新しい就労ビザが必要な場合は、出入国在留管理庁に「在留資格変更許可申請」を提出します。
実際の手続きはおもに外国人本人が行いますが、企業側が作成する書類もあるため変更手続きが終わるまでしっかりとサポートしましょう。
申請には、申請書、雇用契約書、外国人の履歴書、会社の情報などが含まれます。
審査には数週間から数か月かかることもあるので、早めの準備が大切です。
たとえば、就労ビザを変更する必要がある主なケースを紹介します。
例1. 他の就労ビザから別の就労ビザに変更する場合
外国人が日本で働いているときでも、仕事内容が変わると新しい種類の就労ビザが必要になることがあります。
たとえば、「技能実習」の在留資格を持っている外国人が、別の職場で「特定技能」として働くことになった場合などです。
「技能実習」では特定の実習だけが認められますが、「特定技能」ではより幅広い仕事ができるため、このようなときにはビザの変更が必要です。
例2. 留学生が卒業後に働く場合
日本の大学や専門学校を卒業した留学生は「留学」の在留資格を持っています。しかし、卒業後に日本で働くには、その仕事に合った就労ビザ(たとえば「技術・人文知識・国際業務」など)に変更しなければなりません。
「留学」の資格は学ぶことは許されていますが、働くことはできないからです。
就職先が決まったら、その会社と雇用契約を結んでビザ変更の申請をする必要があります。「短期滞在」や「家族滞在」の在留資格を持っている外国人を雇う場合も、同じような手続きが必要です。
STEP4. 「変更が完了したら」正式に雇用する
適切な在留資格を取得すると、外国人は正式に働けるようになります。
就労ビザの申請をする際に注意しておくことは?
ここでは、申請の前後に気を付けるべきポイントを紹介します。
在留期限を確認する
とくに日本にいる外国人を雇う場合、まず現在の在留資格の期限を確認することが大切です。
もし同じビザで働ける場合でも、期限が近づいているときは、先に更新手続きをする方がいいことがあります。
在留資格が切れてしまうと不法就労になってしまうので、仕事を始める前に期限をしっかり確認しておきましょう。
不法就労助長罪にならないようにする
在留資格に合わない仕事をしたり、許可なしに働いたりすると、不法就労助長罪に該当します。
この場合、3年以下の懲役か300万円以下の罰金が科される可能性があります。
事前に業務内容が適切かどうかを確認して、許可された範囲内で働くようにしましょう。
取得期間を意識して早めに行動する
就労ビザの申請には、審査に数週間から数か月かかることがあります。そのため、早めに行動することがとても重要です。
とくに海外から外国人を呼び寄せる場合は、入国までの準備や手続きも必要なので、計画には余裕を持たせましょう。
さいごに
今回は、外国人が働くための就労ビザについて、申請の流れを説明しました。
国内にいる外国人と、海外にいる外国人ではビザの申請方法が違います。また、すでにビザを持っている外国人でも、決められた仕事以外はできないなど、注意が必要な点がいくつかあります。
申請に時間がかけられない場合や不安がある方は、資格を持つ行政書士などの専門家に相談することを考えてみましょう。