外国人採用の注意点15選!行政書士が解説!
近年、日本では少子高齢化やグローバル化の影響で、外国人を採用する企業が増えています。外国人採用にはメリットもありますが、知られていない落とし穴があるのも事実です。
この記事では、行政書士が解説する外国人採用の15の注意点について紹介します。
外国人採用の注意点を詳しく見てみよう
外国人採用を始めるときに注意したいポイントはこちら!
- 在留資格とビザは別物
- 在留資格を確認する
- 在留期限を確認する
- 日本語レベルを確認する
- 人種・国籍などによる差別は禁止
- 在留資格の範囲内での業務しかできない
- 基本的に単純労働は禁止
- 給与は日本人と同じでなければならない
- 社会保険や税金は外国人にも適用される
- 労働条件を理解しているか十分に確認する
- 教育環境を整える
- 日本人労働者にも理解してもらう
- 採用・離職時の正しい届け出をおこなう
- 信頼できる人材紹介会社をえらぶ
- 違法な雇用は企業も罰せられる
さっそく、それぞれの注意点をくわしく紹介していきます。
注意点① 在留資格とビザは別物
在留資格とビザは違うものです。
- 在留資格:外国人が日本に滞在するために必要な資格。法務省が認定します。
- ビザ(査証):外国人が日本に入国するための許可証。外務省が発行します。
具体的には、外国人が日本に入国する際、まず外務省からビザをもらい、それを持って日本に来ます。そして、入国審査でビザを見せて、問題がなければ法務省から在留資格が与えられます。
ビザをもらっても必ずしも在留資格がもらえるわけではありません。この違いを理解することが大切です。
まとめると、ビザは日本に入るための許可証で、在留資格は日本に滞在するための資格です。両方とも大事ですが、それぞれ役割が違います。
また「就労ビザ」という言葉をよく耳にしますが、これは俗称です。正式には「働くための在留資格」ですので、混同しないようにしましょう。
注意点② 在留資格を確認する
引用:出入国管理庁ホームページ
外国人が仕事を求めて応募してきたら、まず在留カードを用いて在留資格を確認する必要があります。
在留カードの確認
- 偽造カードではないかどうかを確認します。コピーの場合は偽造の可能性があるので、在留カードは実物を確認するようにしましょう。
- 目で見るだけでなく、アプリを使って確認する方法もあります。
在留資格の確認
- 在留カードには「在留資格名」と「就労制限の有無」が書かれています。ここで応募者が希望する仕事ができるかどうかを確認します。
- 「就労不可」と書かれていても、裏面に「資格外活動許可」という記載があれば、一定の制限内で働けます。
この在留資格は、車の運転免許のように、法務省が与える許可の一種です。もし、許可された範囲を超えて働くと違法になります。
就労可能な在留資格は、一定の経験や学歴がないと許可されません。また、業種や業務内容によっては在留資格が許可されないこともあります。
まとめると、外国人を雇うときは、まず在留カードと在留資格を確認し、適切な資格を持っているかどうかを確認することが大切です。
注意点③ 在留期限を確認する
外国人を雇うときは、在留期限を確認することがとても大切です。在留期限が切れた外国人を雇うと、雇用主には「3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」が科せられる可能性があります。
また「在留期限」と「在留カードの有効期限」は以下のように異なる意味があるため、併せて覚えておきましょう。
在留期限
外国人が日本に滞在するための資格の有効期間のことです。この期限を過ぎると不法滞在者(オーバーステイ)となり、犯罪とみなされます。雇用者も法的責任を問われることがあります。
在留カードの有効期限
身分証明書としての在留カードの有効期限です。この期限が切れるとカードは無効になりますが、在留資格自体は残ります。ただし、更新を忘れると罰則があります。
基本的には、在留期限と在留カードの有効期限は同じ日になることが多いです。この2つは意味が異なりますが、どちらも期限内に更新することが重要です。
まとめると、外国人を雇うときは、必ず在留期限と在留カードの有効期限を確認し、どちらも期限内に更新されているかを確認することが大切です。これにより、不法就労を防ぎ、法律違反を避けることができます。
注意点④ 日本語レベルを確認する
外国人を雇うときは、日本語がどのくらい話せるかを確認することが大切です。
日本語が上手でも、仕事ができるとは限りません。過去の経験を日本語で具体的に聞いて、うまく仕事で力を発揮できるかを確認しましょう。
日本語能力は、日本語能力試験(JLPT)で確認できます。N1が一番高く、ビジネスの場ではN1かN2が必要です。N3は日常会話が理解でき、N4は簡単な話題を読めるレベルです。工場などではN3やN4でも働けることがあります。
日本語が上手だと、ビザも取りやすくなりますので、採用するときにしっかり確認することをおすすめします。
注意点⑤ 人種・国籍などによる差別は禁止
外国人を採用する際、人種や国籍などによる差別は禁止されています。これは法律で決められているため、不利に扱うことはできません。
求人募集に「〇〇人歓迎」などの国籍や人種を指定する書き方も避ける方が良いでしょう。たとえば、「国籍不問」といった内容を伝えたい場合は、「外国人の方も働いている」や「留学生・就学生歓迎」といった言葉に置き換えることができます。
外国人を採用する際は、国籍や人種ではなく、応募者の能力や経験を見て、その人が仕事に適しているかどうかを判断しましょう。
注意点⑥ 在留資格の範囲内での業務しかできない
外国人が働ける仕事は、その人の在留資格によって決まります。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格を持っている人は、専門的な仕事しかできません。単純作業や、はじめての分野の仕事には就けないのです。
採用する前に、その外国人の在留資格が予定しているポジションに合っているか確認しましょう。「在留カード」を見れば簡単にわかります。もし合わなければ、在留資格を変更する必要があります。
海外から外国人を雇うときは、その人の学歴や職歴も大切です。適切な人なら、企業が「在留資格認定証明書」を代理で申請できます。
不法就労を避けるために、在留資格と仕事内容が一致しているかをしっかり確認しましょう。
注意点⑦ 基本的に単純労働は禁止
外国人が日本で働く場合、基本的に単純労働は禁止されています。たとえば、コンビニやスーパーのレジ打ちのような仕事は、ほとんどの在留資格ではできません。
この禁止の理由は、日本の治安への影響や、日本で働く人の仕事を奪う可能性があるからです。
ただし、「留学」や「家族滞在」の在留資格を持っている人は、入国管理局で「資格外活動の許可」を受けることで、週28時間まで単純労働ができます。ただし、キャバクラなどの風俗営業店などでは働けません。
また、「永住者」や「日本人の配偶者等」など、身分系の在留資格を持つ人は、就労に制限がないため、単純労働を含むさまざまな仕事に就くことができます。
注意点⑧ 給与は日本人と同じでなければならない
外国人を雇うときは、日本人と同じ給与設定でなければなりません。つまり、外国人を安く雇うことはできず、労働基準法や最低賃金法が適用されます。
企業が「外国人社員は教育が大変だから、賃金を安くしてもいい」と考えるのは間違いです。日本語のコミュニケーションが難しくても、最低賃金を守る必要があります。
また、同じ仕事をしていれば、正社員も非正規社員も関係なく、同じ賃金を受け取る権利があります。仕事内容が異なる場合には賃金が違うこともありますが、その理由が差別的であってはいけません。
残業代や扶養家族に関する年収基準、毎年更新される地域別の最低賃金など、ルールをしっかり守って外国人を雇うことが大切です。
注意点⑨ 社会保険や税金は外国人にも適用される
外国人を雇うときも、社会保険や税金は適用されます。
外国人が正社員として働く場合や、アルバイトでも正社員の4分の3以上の時間働く場合は、社会保険に加入しなければなりません。社員が希望するかどうかに関係なく、法律に基づいて加入する義務があるため、社会保険に加入させないと、雇用主が罰則を受ける可能性があります。
社会保険には、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険が含まれます。また、所得税や住民税も日本人と同じように適用されます。
つまり、外国人を雇う際は日本人と同じように「社会保険」や「税金」を適切に扱う必要があります。
参考:法務省 税金
参考:日本年金機構 外国人従業員を雇用したときの手続き
注意点⑩ 労働条件を理解しているか十分に確認する
外国人を雇うときは、労働条件をしっかり確認してもらうことが大切です。
日本語が母国語でない外国人に口頭で説明しても、誤解が生じやすく、トラブルの原因になることがあります。ですので、契約書を作成して説明する機会を設けましょう。
労働条件に関する書類は、労働条件通知書よりも雇用契約書の方が良いです。なぜなら、一方的に通知するのではなく、双方が同意したという文書が残るため、後々トラブルになりにくいからです。
日本人同士では当たり前と思っていることも、外国人には違うことがあります。契約書に書いておけば、トラブルを防ぐことができます。
外国人を雇うときは、労働条件をしっかり伝え、納得してもらうことが大切です。
注意点 ⑪ 教育環境を整える
外国人労働者のスキルを高めるためには、しっかりした教育環境が重要になります。
業務マニュアルを渡すだけではうまく実行できないことがあるので、教育担当者が積極的にコミュニケーションをとり、上司が定期的に面談をおこなうようにしましょう。
また、コミュニケーションをスムーズにするための日本語教育も大切です。
指示の誤解や情報の伝達ミスを防ぐために、日本語を教えることが役立ちます。企業内で行うことも、外部に委託することもできますが、一人ひとりに合わせた教育が必要です。
さらに、安全衛生教育は必須です。特に機械や化学物質を扱う際には特有のリスクがあるため、安全に作業を行い、労働災害を防ぐことが求められます。
このように、外国人労働者に対する教育環境を整えることで、安心して働ける職場を作りましょう。
注意点 ⑫ 日本人労働者にも理解してもらう
外国人労働者は、日本人とは異なる価値観や文化を持っています。そのため、業務をスムーズに進めるためには、お互いの文化や価値観を理解することが大切です。
たとえば、多くの外国人は宗教が生活に深く関わっています。宗教上の理由で食べられないものがあったり、特別なお祈りや断食が必要だったりします。こうしたことに配慮しないのはハラスメントにあたります。
また、日本のチームワークを重視する文化と、海外の個人主義的な働き方の違いも理解しておく必要があります。
文化の違いを知ることで、トラブルや誤解が減ります。そして、外国人労働者にも日本のマナーや職場のルールを理解してもらうことで、お互いに働きやすくなります。
このように、日本人と外国人が互いに理解し合うことで、より良い職場環境が作れるのです。
注意点 ⑬ 採用・離職時の正しい届け出をおこなう
外国人を雇うときは、外国人雇用状況届出書や在留資格の変更・更新に関する届け出を正しくおこなうことが大切です。
外国人雇用状況届出書が必要なのは、日本国籍を持っていない外国人で、在留資格が「外交」や「公用」以外の人です。特別永住者も届出が不要です。
届け出る内容には、労働者の在留資格や仕事内容、在留期間などがあります。これを管轄のハローワークに適切な形式で届け出ましょう。
また、在留資格の変更などは、入社前に済ませておかないと働くことができません。
外国人を雇う際のルールは入管法で決められており、ルールを破ると不法就労とみなされ、雇用主には懲役や罰金が科せられることがあります。
外国人雇用に関する手続きは正しくおこなうことが必要です。
注意点 ⑭ 信頼できる人材紹介会社をえらぶ
外国人を雇うときは、人材紹介会社を慎重に選ぶことが大切です。会社によって紹介される外国人の質やサポート内容が異なります。人材紹介会社を選ぶときは、「有料職業紹介事業」の許可を持つ会社を選びましょう。
派遣サービスを使う場合は、労働保険や社会保険に加入させない違法行為をしていないかを確認する必要があります。
一部の人材紹介会社は、雇用内容が違法でも「問題ない」と言うことがありますが、この場合、雇用主は「知らなかった」では済まされません。
外国人を雇う際は、適法に雇用できるか自分の責任で確認しましょう。
\外国人採用サービス【Guidable Jobs(Guidable株式会社)】は有料職業紹介事業です!/
注意点 ⑮ 違法な雇用は企業も罰せられる
外国人を雇うときも、日本人と同じように法律を守る必要があります。とくに「不法就労助長罪」に注意しましょう。不法就労者を雇うと、企業には懲役や罰金が科せられます。
観光ビザで来た人や在留期間が過ぎた人を雇うのは違法です。
また、不正入国した人や働く許可がない外国人を雇うことも違法です。働く許可がないとは、就労ビザを持っていない外国人のことです。
不法就労者かどうかは、在留カードで確認できます。不安な場合は専門家に相談して、適法に雇用できるかを確認してください。
外国人採用のメリット・デメリット
外国人を雇用することには、次のようなメリット・デメリットがあります。
それぞれのポイントを押さえて、外国人を採用する際の判断材料にしましょう。
メリット① 価値観の多様化で新しい発見につながる メリット② 若い労働力が確保できる メリット③ 新規市場開拓、海外進出の足がかりになる メリット④ インバウンド対応力を強化できる
デメリット① 言語の壁がある デメリット② 文化の違いがある デメリット③ 在留資格や法的な制約がある デメリット④ 雇用の安定性が求められる
メリット・デメリットについての詳細は、以下の記事を参考にしてください。
さいごに
今回紹介した注意点を守ることで、外国人労働者にとって働きやすい環境を作れます。
外国人と日本人の両方のスキルを活かすためには、事前の話し合いや労働条件の確認が重要です。
国籍に関係なく働きやすい環境を整えると、社員のモチベーションも上がり、会社の利益も増えていくでしょう。
ぜひこの機会に、外国人採用をいち早く取り入れてみてはいかがでしょうか?